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ストリートピアノのような事をスタジオでやろうと思います2 大阪梅田Kimball PS [ストリートピアノ]

大阪梅田にある僕のスタジオ「Kimball Piano Salon」の「レンタル練習室」を活用して「ストリートピアノのような事ができないか?」と思いつきましたが、そもそも「ストリートピアノとは何か?」と考え始めました。前回の続きです。

そもそもピアノは「ストリート」で使うようには作られていない

「ピアノ」は本来「ピアノフォルテ」つまり「弱音~強音が出せる」事に特性がありますが、「ストリートピアノ」の場合、どうしても「強音~最強音(フォルテ~フォルティシモ)」の演奏になり勝ちで、しかも最も美味しい「余韻の美しさ」を伝えれない、という傾向にあります。

時々、僕も「野外イベント」でピアノ演奏しますが、大きなイベントになれば、音響屋さんが用意した巨大なPAスピーカー(音響)設備があり、上記の「余韻の美しさ」を組み込んだ演奏を客席に届ける事がある程度可能となります(PAスピーカー自体、あまり繊細な音はしませんが。)

対してPAスピーカーが用意されていない「ストリートピアノ」の場合、、どうしてもガンガン、カンカンと鍵盤を叩きつけるような演奏になりがちで、ショパンを弾こうがモーツァルトを弾こうが「ハノン」にしか聴こえなくなり、「うるさい」とか「不愉快」とかの苦情が出たりする訳です。

勿論、一部のアニメソングなぞは「ストリートピアノによる演奏」を想定した、とは思えないにせよ、単に感情を入れて鍵盤を叩けば、それなりに聴ける、という場合もありますが、これは「ピアノ音楽」としては「異端」と呼べましょう。

尤もショパンやリスト等のクラシック系「ロマン派のピアノ音楽」の「弾くのが難しい曲」については、当時の音量の小さなピアノで広い演奏会場に演奏を届ける為に「より多くの音で埋め尽くす」、いわば「元祖ストリートピアノ」的な音楽も存在します。

流石にショパンやリスト、シューマン、ブラームスといった「楽聖」の場合、いくら音数が多かったり、和音が厚くても、音楽的な必然性があり、「名曲」と呼べるクオリティが保たれます。


伝記によれば、ショパン自身は「ロマン派のピアノ音楽」は大嫌いだったそうですが、この場合の「ロマン派」とは上記の「楽聖」達ではなく、今や忘れさせれたが、当時はショパンやリストと並ぶ「超絶技法派」で当時のパリやウィーンで人気を誇ったピアニスト/作曲家の作品を指します。

「矢鱈と派手なパッセージが連発されるが、中身は何もない」というのは「ストリートピアノ」に限らず、ピアニストが陥りがちな傾向ですが、19世紀の「ピアノ音楽の観客」だった振興ブルジョワというものは、今の「ストリートピアノ」同様に音楽的素養がなく、例えば新聞に「ピアニストの誰それはショパンの子犬のワルツを何分で弾いた=最速記録更新みたいな事が書かれてありました。

ゆっくり弾けば良い、という事は全くありませんが、音楽の本質は「何分で弾いた」ではなく、フレージングやハーモニー、全体の構成の妙や、タッチやペタリングによる音色作りにありましょう。

「子犬のワルツ」を、内容は滅茶苦茶だが、とにかく「楽譜に書かれた音を鍵盤で叩きまくた速度」を競うのだとすれば、AI等の自動演奏の速度を上げれば済みます。

勿論、ピアノ演奏を目指す人の全員が「ストリートピアノ」を目指す訳でも、また「ストリートピアノ」で演奏する全員が「鍵盤叩き」を目指す訳ではありませんが、「ストリートピアノの流行」が「音楽振興」或いは楽器メーカーや音楽教室が泣いて喜ぶ「ピアノの普及」に連なるのか、といえば、むしろ「衰退の始まり」ではないかとさえ思う次第です。

そして「ストリートピアノ」がピアノ演奏としては「異端」であるのは、そもそもピアノが「屋外(ストリート)演奏」用には作られていない事を指摘できます。

「ニューオリンズジャズ」の場合、ピアニストは屋内はピアノを、ストリートはバンジョーを弾く

「音楽演奏」には「野外演奏」に適した、或いは「野外演奏が前提」のものもあれば、「屋内演奏」に適してものもあります。

そして「野外演奏」に適した楽器があります。例えば金管楽器は交響曲のような「屋内音楽」にも用いられますが、マーチバンドのように「野外演奏」を主体とする場合に中心的役割を果たします。

ちなみに僕の出身高校である早稲田摂陵の「ウィンドバンド」は、阪急少年音楽隊を引き継ぎ程の優秀な楽団(女子のみ)ですが、金管楽器のみならず、木管楽器であるクラリネット等も加わるのは、「野外でのマーチ演奏」だけでなく、屋内の「吹奏楽のコンサート演奏」も想定しているからでしょう。

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トランペットの場合、顔をあげて高々と演奏する事が可能ですが、クラリネットの場合、どうしても下向きになるので「行進しながらの演奏」には不向きなようです。

それでもギリギリ「行進しながらの演奏」が可能なようですが、例えばウッドベースやピアノを抱えての演奏は不可能ですので「マーチバンド」には使われません。

屋内の「吹奏楽」ならばウッドベースの使用が可能ですが、野外でのマーチバンドの場合、ウッドベースに相当する低音を受け持つのが、体中に管を巻き付ける「スーザホン」と呼ばれる楽器です。

写真の大きな楽器
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そういわれてみれば、以前「ニューオリンズ・ジャズ」のフェスティバルを観に行った際、ベース奏者がウッドベースとスーザホーンを持ち替えするのに驚きましたが、もう一つ驚いたのが、ピアニストが「バンジョー」と持ち替えた事です。

「ニューオリンズ・ジャズ」ではピアニストはピアノとバンジョーを持ち替えする

「ニューオリンズ・ジャズ」については、「音楽教室」の項目で詳しく書きたいと思いますが、大雑把に説明すれば、1920年代頃にシカゴで生まれた一般に「初期のジャズ」と呼ばれる音楽の一つです。
とて「ニューオリンズ・ジャズ」があります。

僕自身は「ニューオリンズ・ジャズ」の専門家ではなく、「ジャズの基礎」としてギロックやマーサ・ミアー等の「ニューオリンズ・ジャズ・スタイル」のピアノ曲集を教材として使う程度の繋がりですが、ウチのスタッフに「ニューオリンズ・ジャズ命」という人がいて、連れられたライブを観に行ったりします。

興味深いのは「ニューオリンズ・ジャズ」の場合、ピアニストがバンジョーと持ち替えたり、ベーシストがスーザホーンと持ち替えたりする事です。

僕も戯れに「鍵盤ハーモニカ」や「ジャズオルガン」を弾きますが、鍵盤ハーモニカにせよ、オルガンにせよ、ピアノと似ているのは「鍵盤がある」というだけで全く異なる楽器であり、少なくともお金を貰ってのステージで堂々と鍵盤ハーモニカやオルガンを弾こうとは思いません。

ところが「ニューオリンズ・ジャズ」のピアニストの場合、「戯れ」というよりは、いわば「ニューオリンズ・ジャズのバンドでのピアノ演奏」の「基礎」としてバンジョーを弾く、という感じ。

そういえば、「ニューオリンズ・ジャズの大御所であるトランぺッターの外山喜雄さんのバンド」の場合、ピアニストは外山夫人の恵子さんですが、恵子さんはピアノだけでなくバンジョーも演奏します。

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外山恵子さんは、とても良いピアニストで、僕も大好きなのですが、バンジョーについても「プロ奏者」なのは、「ニューオリンズ・ジャズのバンド」の場合、「和音を刻む」役割担当として、ピアノやバンジョーを演奏する、という事になるようです。

尚、一つのコンサートでピアノとバンジョーを持ち替えする事もあるようですが、本来、「屋外」でバンジョーを、「屋内」ではピアノを演奏する、という使い方らしいです。

つまり「ニューオリンズ・ジャズ」のバンドの場合、同じメンバーであっても、
「屋外」ではバンジョーやスーザホーン
「屋内」ではピアノやウッドベース

を使い分けるようで、話を元に戻すと「ピアノ」は「屋外=ストリート」の演奏には適さない、
と言えましょう。

では、どうするべきか?(3につづく)

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