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ニューオリンズ派ギロック vs NY派リー・エバンス どちらが良い? [Lee Evans Society]

リー・エバンス・メソッドが合う人、合わない人


僕が主宰を務める「リー・エバンス・ソサエティ」は米国の教育家リー・エバンス教授による「ジャズピアノ・メソッド」の普及が活動目標です。

だから出来るだけ多くの方に「リー・エバンス・メソッド」を知って〜使って欲しい、とは思いますが、「リー・エバンス・メソッド」が合う人合わない人がいます。

リーエバンスメソッドが合わない人のパターンとして、 「ジャズに興味がない人」

当然ですよね。

もう一つが「ラグタイムやニューオリンズジャズが好きな人」

これはチョット説明が必要ですね。

ジャズの「時代スタイル」のお話

「ジャズ」と一言に言っても色々なスタイルがありますが、大きな区分として「時代」があります。

クラシックでも「バロック〜古典〜ロマン~近現代」という具合に「時代区分」があるようにジャズでも1920年代から始まって1970年代頃迄、十年単位でスタイルが変化します。

1980年代以後はどうなっているのか?と言えば、実は「進化」が止まってしまい、2020年代の現在も「主流派」と呼ばれるのは「1960年代のモードジャズ」や「1950年代のハードバップ」。

勿論、「新しいスタイル」への革新を続けた人も少数ながらいますが、1970年代頃で「ジャズの進化」は一応止まり、むしろ過去のスタイルの「深化」を追求する、という方向に主流が変わっています。

これはファッションも同じで、例えば1930年代と1950年代ではスタイルが相当違う、「進化」した訳で、1970年代頃にはレーヨン等の化学繊維や「新しいスタイル」が色々と登場しました。

僕が子供の頃、つまり1970年代の小学生や中学生が描く「2020年代」なんてのは、正に「進化」が極まり、皆、宇宙服みたいな服を着て、食事は錠剤みたいなもので済ませ、音楽は宇宙音みたいな電子音になっている、と信じていた訳ですね。

ジャズの進化は1970年代で止まり、1980年代以後は過去のジャズの深化を目指す

実際は1980年代頃から「過去のスタイルへの回帰」が始まり、現在に至っても例えばメンズスーツなんかは1950年代頃のスタイルが基になっています。

話を戻せば、「ジャズ」は「時代区分」で色々なスタイルがある訳ですが、「リー・エバンス・メソッド」はリー・エバンス先生ご自身が「1960年代にデビューしたジャズピアニスト」という事もあり、「中上級用」の「ラウンジ・ジャズ・コレクション」は「1960~70年代のジャズ」スタイルになっています。

「ジャズの基礎」として1920~30年代スタイルを学ぶ

但し、それは「ラウンジ・ジャズ・コレクション」自体が、「リー・エバンス先生の音楽表現」としての編曲集だからであり、中級以下の「ピアノ教本」等については異なります。

「ピアノ教本」等はあくまで「教育」目的の「教材」であり、「ジャズの基礎」を学ぶ事にあります。

ちなみに「ジャズの基礎」として日本では「1950〜60年代のジャズ」レコードの名盤を易しく編曲したものを弾かせる事が多いようです。

つまりクラシックでいえばショパンの「革命のエチュード」はカッコイイから弾きたい人が多いが、初心者には無理なので「易しく編曲」した版を弾かせてしまう、というのと同じ。

勿論、そんな事は全く無意味!

クラシックでいえば「将来はショパンを弾く」にせよ、初心者の間は、始めから初心者向きに作曲されたバッハやベートーヴェン等の「バロック〜古典派」の小品を沢山弾かせる事が最も効果的。

同じようにリー・エバンス先生に限らず、欧米のジャズ教育家は考える訳で、「モダンジャズ(いわばロマン派スタイル)の基礎」は「なんちゃってジャズ」ではなく、クラシックの「バロック」や「古典派」に相当する「1920~30年代の初期ジャズ」とします。

適当な言葉がないので「初期ジャズ」と呼ばれていますが、この中には1920年代以前の、19世紀末に造られた「ラグタイム」も含まれます。

1920年代にジャズの王様と呼ばれたガーシュインは「ジャズミュージシャン」ではない

また1920年代といえば、クラシックしか興味がない方でもご存知かと思われるジョージ・ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」が初演された時代ですが、当時、ガーシュインは「ジャズの王様」と呼ばれていました。

かと言って、実はこの時代には「ジャズ」という音楽ジャンルは存在せず、「ジャズ」は、例えば昭和や平成に相当する「ジャズ時代」ともいうべき、「文化風俗全般」を現わす「時代区分」の名称でした。

つまり「ジャズ時代」の文化や雰囲気を代表する音楽家がガーシュインだった、という訳ですが、逆にいえば、1920年代には、今日「ジャズ」と呼ばれる音楽スタイルが何種類かありました。

詳しい話は別の機会にするとして、大雑把にいえば二種類、つまり「南部発祥のニューオリンズジャズ」と「北部発祥のニューヨークジャズ」です。

南部ジャズと北部ジャズという二つの流れ

「ニューオリンズ・ジャズ」といえば、サッチモことトランぺッターのルイ・アームストロングが有名で、ヒット曲「聖者の行進」は誰でも知っている音楽ですね。

或いはピアノ発表会に必ずと言って登場する曲「エンターテイナー」の作曲者であるスコット・ジョプリンも南部出身です。

これも大雑把な話になりますが、「ジャズ」の源流(先祖)である「ラグタイム」や「ブルース」等は南部発祥であり、後年の1920年代に、それらが合流した「ニューオリンズ・ジャズ」は南部出身の黒人達が、南部不況の為に移住した米国中部の都市シカゴで造られました。

いわば博多出身の方が大阪でラーメン店を開業したも「大阪ラーメン」ではなく「博多ラーメン」になるのと同様、「シカゴ・ジャズ」ではなく「ニューオリンズ・ジャズ」を名乗る訳ですが、サッチモ(ルイ・アームストロング)より一世代古い、サッチモの師匠であるキング・オリバーやピアニストのジェリー・ロール・モートン達が「ジャズを造った」と言えましょう。

南部ジャズの模倣から始まった北部ジャズ

対して北部ニューヨークの状況はどうだったのか?といえば、実は「ジャズ」は
なく、黒人音楽家は存在したもののブルースもジャズも演奏できなかった、という塩梅でした。

とはいえサッチモ等の「ニューオリンズ・ジャズ」がニューヨークに伝わり人気が爆発するに連れ、北部のミュージシャンは黒人、白人問わず、「ジャズ」スタイルで演奏するようになりました。

黒人では1930年代に登場するデューク・エリントンが有名ですが、少し前の1920年代に、スコット・ジョプリンの「ラグタイム」をハーモニーや構成を複雑化し、超絶技法のピアノ演奏を加えた「ストライドピアノ」と呼ばれるスタイルも注目を浴びました。

南部「ニューオリンズ・ジャズ」の創成者にしてピアニストであるジェリー・ロール・モートンは「技巧派ピアニスト」としても有名で、後の映画「海の上のピアニスト」で、主人公のライバル(?)として登場しますが、そんなジェリー・ロール・モートンが、実はニューヨークでは成功できませんでした。

つまりクラシックピアノ教育を受け、ショパンやリストの難曲を弾きこなしたニューヨークの黒人ピアニストやガーシュインのような白人ピアニストの「超絶技法」の前では、当時の観客にとってはモートンも色あせて見えた訳です。

https://youtu.be/ySQ8cA4a-f8?si=d1DyMaRd7XkrRdgL

ニューオリンズ=大阪風味、ニューヨーク=東京風味の闘い(?)

当時、南北でジャズ対立していた訳ではありませんが、いわば「天ぷらの味、関東VS関西」があり、結果としてローカルな南部は、組織的に音楽商業として発展した北部ニューヨークジャズに負けてしまいます。

だから「ジャズ=ニューヨーク」という図式になった訳ですが、今の時代になると、案外「ニューオリンズ・ジャズの味わい」は多くのファンを持ちます。

モダンジャズ・ファンはニューオリンズ・ジャズを聴かない

日本では「ジャズファン=1950〜60年代のモダンジャズのファン」を差しますが、おかしなもので「モダンジャズのファン」は「1920年代のニューオリンズ・ジャズ」には興味がない方が大多数です。

逆に「1920年代のニューオリンズ・ジャズのファン」は「1950〜60年代のモダンジャズ」に否定的な方が少なくありません。

いわば「天ぷらの味、関東VS関西」みたいなもので、「両方とも好き」という方よりも、どちらかしか認めない、という方の方が多いのと似ています。

蛇足ながら、僕は大阪人なので、天ぷら、うなぎ、うどん等は関西式でないと満足できませんが、それも蛇足ですが、蕎麦は勿論、パスタやパンは関東の方が美味しいと思います。

リー・エバンス=ニューヨーク、ギロック=ニューオリンズ、それぞれ良い

話が長くなりましたが、「リー・エバンス・メソッド」に話を戻しますと、リー・エバンス先生はニューヨーク生まれ、という事もあり、本人が意識しようがしまいが、やはり「ニューヨークの音」がします。

つまり「ジャズの基礎」である「1920~30年代の初期ジャズ」も、リー・エバンス先生の場合、どうしても「ニューヨーク・スタイル」つまり「ストライドピアノ」のJPジョンソンやファッツ・ウォーラー、「ジャズ」のガーシュインやデューク・エリントンのスタイルになります。

それで文句を言う方はいない筈ですが、「ニューオリンズ・ジャズ」が好きな方にとってはベストとは言えない筈です。

ニューオリンズ・ジャズのギロック、ニューヨーク・ジャズのリー・エバンス

結論からいいますと、僕の教室でも、「ニューオリンズ・ジャズが好き!」とか「ニューオリンズ・ジャズを弾けるようになりたい!」という方には、「リー・エバンス」ではなく「ギロック系」をお薦めしています。

「ギロック系」はウィリアム・ギロック先生以下、お弟子さんのキャサリン・ロリンさんやグレンダ・オースティンさん等、実際に「南部出身」であり、自然と「ニューオリンズ・ジャズ」が造られます。

いわば大阪人の僕が喋ると、自然と「大阪弁」になるのと同じ事ですね。

ちなみに僕の教室では、「ギロック系」ながら、お弟子さんではない「マーサ・ミアー」の国内未発売(一部のみ発売済み)の教材を使っています。

逆に「ニューオリンズ・ジャズ」に特に思い入れがない方には、僕の教室もですが、「リー・エバンス」をお薦めするのは、「ニューヨーク・スタイル」、つまり「その後のジャズ主流の源流」だから良い、という事もありますが、敢えて言えば「ジャズ・メソッド」として、「リー・エバンス」が優れているからです。

という訳で、
「ジャズに興味がない方」 「ニューオリンズ・ジャズの方が好き」という方 以外にお薦めできるのが「リー・エバンス」です

おっと、今日は「子供のジャズ=リー・エバンス・メソッドを中学生以下のKids~ジュニアが使う場合」についてお話するつもりでしたが、「ニューオリンズ・ジャズとニューヨーク・ジャズ」のお話になってしまいました。

次回は「子供のジャズ」についてお話します!

リー・エバンス・ソサエティ主宰藤井一成

藤井の教室は大阪梅田Kimball Piano Salon
リーエバンスメソッドによるレッスンは大阪と横浜で展開中!
http://www.eonet.ne.jp/~pianosalon/Kimball_Piano_Salon











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