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ジャズとクラシックでは「ピアノの弾き方が違う」はウソ!つづき [Lee Evans Society]

「ジャズとクラシックではピアノの弾き方が違うのでは?」と言う疑問を多く方がお持ちのようです。



ジャズとクラシックとで「弾き方」が違っても困らないとも言えますが、クラシックピアノを長年追求して来られた方が「ジャズピアノを始める場合」や、クラシックピアノの先生が「教えている生徒さんがジャズを始めたい、と言い出した場合」は、深刻な問題となります。



結論、或いは僕の考えとしては、前回述べましたように「ジャズとクラシックで弾き方は違わない」となりますが、言ってるだけでは単なる「気休め」に過ぎませんね。



という訳で、今日は突っ込んで「ジャズとクラシックとでは弾き方は違わない」根拠をお話します。


そもそも「クラシック的な弾き方」とはなにか?



有名無名の「ジャズピアニスト」で「クラシックピアノ経験が全くない」という人は例外的ですが、「クラシック経験の過多」については千差万別です。



有名ジャズピアニストを見渡せば、白人のビル・エヴァンスやキース・ジャレット、リチャード・バイラーク等は「クラシックピアノのトレーニングを積んでいる」ようです。



対して黒人であるセロニアス・モンクやマル・ウォルドロン等は、そういう感じは薄い。


かと言って、同じ黒人であっても、1920~40年代「スウィングジャズ」時代の「ストライドピアノ」と呼ばれるスタイルのジャズピアニスト達は、クラシック・ピアノの超絶技法の持ち主が多い。



「ストライドピアノ」の最高峰と言われるアート・テイタムに至っては、当時アメリカに亡命してきた「二十世紀最高のピアニスト」と呼ばれた巨匠、ウラディーミル・ホロビッツが、先輩であるラフマニノフを例外として唯一認めたピアニストでありました。



(ホロビッツは、同じく巨匠で、先輩であるルービンシュタインを格下扱いしていたそうですが、テイタムを聴くために、テイタムが出演するクラブに通い、時にはラフマニノフを伴って出かけた、という記録が、ホロビッツをテイタムに引き合わせたジュリアード音楽院教授によってあります。)



またグレン・グールドといえば「最高のバッハ演奏家」としても有名ですが、ピアノにうるさく、ニューヨーク・スタインウェイの貸しピアノの中から、自分が気に入ったピアノについては、他のピアニストどころか調律師が弾く事も禁止したそうです。



そんなグレン・グールドが唯一「自分のピアノ(正確にはスタインウェイ社に他のピアニストに触らせないように言い渡した)」を使う事を許したのが、「ジャズピアニスト」のビル・エバンスでした。
エバンスは「グールドのピアノ」で歴史的なソロピアノの名盤「アローン」を録音しました。



この辺りのエピソードも「クラシックとジャズとで弾き方が違わない」或いは「クラシックピアニストが違和感なく聴けたジャズピアニスト」が無数に存在した、という事を証明しています。


ところで「ジャズ的な弾き方とは何か?」を考える前に「クラシック的な弾き方とは何か?」を考えてみる必要があります。



尤も、これも簡単に定義できないのは、同じ「クラシックピアニスト」でも各々で「弾き方」が違う、以上に、「時代」で「弾き方」全般が変わっている、と思えるからです。



僕が個人的に好きなのは第二次世界大戦以前から活躍していた「巨匠」と呼ばれるドイツやフランスのピアニスト達ですが、1970年代頃から活動を始めた、今時の「巨匠」とは、根本的に「ピアノの弾き方」が違う、と感じます。



これは「音楽性」が時代で変わった、という事と、使用するピアノが1950年代頃と、それ以後では変わった、という事も影響しているようです。


第二次世界大戦終了頃迄は「世界最高のピアノ」とはドイツの「ベヒシュタイン」を指し、或いはフランスでは「プレイエル」を指しましたが、当時のベヒシュタインやプレイエルは現代のモデルとはアクションもペタルも相当に異なりました。

当時のピアノは、

今の感覚で言えば「速いパッセージが弾きにくく」大音量が出しにくく、また、「音の均一さ」もイマイチですが、反面、一つの鍵盤での細かいニュアンスは出し易い。

逆に、今時は、そもそもプレイエルは存在せず(名前は継続されているようですが)ベヒシュタインは主流でない上、また、まるで異なるピアノになってしまった、という事と共に、日本に限らずアメリカやヨーロッパでも、日本製のヤマハやカワイが多数を占めるようになりました。

つまり欧米でも「ヤマハやカワイで育ったピアニスト」の割合が増加し、よきも悪しきもヤマハやカワイに適した弾き方が「現代のピアノの弾き方」の大勢を占める様になりました。

その影響でスタインウェイやベーゼンドルファーのようなピアノも、何やらヤマハやカワイに似てきたようです。

勿論、ヤマハやカワイを選択する人が増えたのは、特にヤマハピアノの、いわばオートマチックに揃ったタッチが得られる、速く、大きな音で弾ける、というメリットを良しとするからですが、反面、ニュアンスは強弱しか付け難いので、結局「速く、大きな音(或いは弱く弾いても拡声してくれる)で弾く」事を追求する事になります。

その事で「クラシックピアニスト」も昔の「伝統的なヨーロッパ式のピアノ演奏」とは大きく異なる「ピアノの弾き方」が普通になりつつあるようです。

「モダンジャズの名盤」は「昔のピアノ」が用いられた

ところで「モダンジャズの名盤」は1950~60年代に集中しますが、当時の米国のスタジオに設置されたピアノも、或いは当時のジャズピアニストが育ったピアノ環境も、「伝統的なクラシックピアニスト達の環境」に近いものでした(遥かにチープであった筈ですが)。



逆に「今時のジャズピアニスト」は、「今時のクラシックピアニスト」同様にヤマハやカワイで育っている訳で、均質だが、ニュアンスの乏しい音しか出せないので、沢山の音を詰め込む、という傾向にあるように思います。



つまり「ジャズとクラシックの違い」よりも、「戦前のピアノを弾いて育った世代」と「大量生産されたヤマハやカワイで育った世代」との「世代の違い」の方が大きい、と言えましょう。

ところで、昔の今時とでは「ピアノ」自体も違えば「ピアノの弾き方」も変わった訳ですが、
更に突っ込んで「どう変わったのか?」というお話になりますが、これが前回お話した「アフター・プレッシャー」という概念と大いに関係があります。

また「アフタープレッシャー」は「リズム感」と大いに関係があります。

つまり「リズム感=ピアノの弾き方」という図式になりますが、そもそも「リズム感」はジャズとクラシックとでは違うのではないか?という話になります。

その辺りについて次回お話しますね。つづく

大阪梅田芸術劇場北向い Kimball Piano Salon 音楽教室講師
リー・エバンス・ソサエティ代表 藤井一成
http://www.eonet.ne.jp/~pianosalon/Kimball_Piano_Salon
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