「ハノン」でピアノは上手になるのか? 1 [レッスン]
「ピアノもジャズも経験がない人のためのジャズピアノの学び方」
についてお話しする筈が、僕の体験談になり、
ついには「自伝(笑)」になってしまいました。
「失敗の連続」=「無駄のかたまり」だった僕の「ジャズピアノ習得法」というか
「ジャズピアノ人生」のお話を延々と続けるのも我ながら面倒になりました(汗)。
という訳で今日は途中経過を省き「結論」をお一つ。
「これからジャズピアノを始めよう」という方にも、
「ある程度、ジャズピアノが弾ける」という方にもアドバイス。
「失敗したジャズピアノ人生(笑)」にならない鉄則
a,「基礎」をいい加減にやっては駄目
b,「基礎」とは何なのか?を見極める
c,「基礎」の修練を続ける
の三点。
最大の問題は「基礎とは何か?」見極める事
誰だって「基礎が大事」という事は識っておられますが、
では「基礎」とは何か?と問われると漠然としたままなんですね。
「ジャズの基礎はクラシック」と言う説は間違ってないけれども、
では「クラシックの基礎は何か?」と聞かれれば分からない人が殆どでしょう。
「えっクラシックピアノの基礎ですか?
ツェルニーやハノンをしっかりやって、楽典や聴音/視聴も習えばいいのでは」
「何々グレードの取得も励みになります」
とか見当違いのもアドバイスして下さる「ピアノの先生」は少なくありません。
確かに「何々グレード」だかに合格したり、音大や専門学校入学/卒業し、
できれば留学の一つでもすれば、「進歩」した気はするし、
「基礎」はちゃんと習得できていると自他共に感じるでしょう。
しかし、それらは「ある過程」の初歩段階を修めた、
というだけであり、本当にそれらが「音楽の基礎」として形成されるのか、
と言えばそうでもないようです。
僕自身の「人生の過ち」の始まりは、ジャズやクラシックの「基礎」を取り違えたまま驀進し、
膨大な時間を浪費してしまった事にあった、と最近想います。
という訳で「ピアノもジャズも経験がない人のためのジャズピアノの学び方」とも関わる訳で、
「学ぶべき音楽の基礎」とは何か?について考えてみましょう。
「専門的なレッスン」を受けて「基礎が全くない」と分かった
僕の「自伝(笑)」なぞ書いても仕方ないのですが、話の都合上書きますと、
僕は高校生時分から、音大進学を目指し「専門的な先生」の元にレッスンに通い始めました。
それ以前は近所のピアノの先生の元で「クラシック」を習う程度。
熱心にやったのが、中学時代に学校の音楽部で「フォーク・バンド」を結成し、
練習と「ライブ活動(?)」に励んだ程度。
尤も「女の子にモテたい」というか「モテるかも知れない!」という思惑で
当時のローティーンの定番だった「フォーク(ニューミュージック)」をやってましたが、
本当はクラシックのベートーヴェンやショパン等に傾倒し、
ジャズやロックにも関心が強い、という純朴な少年でありました。
結局、高校生頃には「ジャズピアノの道」に進もうという妄想が離れなくなり、
クラシック系音大を目指しますが、作曲科を目指したのは、
単純に「ピアノ科に入学できる技能がなかった」から。
尤もどうせ音大に行くならば作曲科の方が「ジャズピアノの即興演奏」に必要な、
音楽理論的な事が学ベルから得策だろう、とも考えました。
この発想自体は間違ってないものの、僕の能力には大きな問題がありました。
「ジャズピアノ即興に音楽理論の勉強が役立つ」という理由からクラシック系作曲科を目指しましたが、「クラシックの作曲家」ベートーヴェンに憧れたり、リック・ウェイクマンという英国プログレッシブ・ロックの「クラシックとロックの融合」に系統した事もあり、「作曲」にも憧れがありました。
それで、なにやら「作曲作品の断片らしきもの」をノートに書き付けておりましたので、
作曲の先生に「入門」する際に持参しました。
尤も、先生はそれらの「作曲の断片」には全く触れず、
「音楽作曲科進学を目指すならば、入試課題である「和声学」やら「対位法」
を学ばねばならず、教科書を購入して課題を宿題としてやって来い、という話だったので、
僕はガッカリしました。
加えて「聴音」という科目があり、先生がピアノで弾くメロディーを五線紙に書き取ったり、
逆に書かれたメロディーを歌う「視唱」という科目もある、
との事でそれらの「能力テスト」を最初に受けました。
それで判明したのは、僕には「隠れていた才能」がある、という事では全くなく、
僕に「音楽の基礎」が「お話にならない程に欠落していた」という「事実」のみでした。
そら、そうでしょ。殆ど「音楽の勉強」をした事がないのだから。
先生が「変ロ長調の聴音をするから、五線紙に変ロ長調の調号を書いてみろ」とか言われたものの、
そもそも「調号」自体が分からないから、手も足も出ない。
「4分の3拍子」と言われてもよく解らない。
先生も当初こそ「バカヤロー」とか怒鳴るのだけど、
僕が「音楽の基礎」が「原始人並」だと判ると、先生が呆れ、
逆に「苦悩の人」を自称される始末。
結局、先生の元で「作曲の勉強」に通いつつ、先生から紹介した貰った若い女の先生から、
聴音や視唱等の「ソルフェージュ」等を習う事になり、又、僕の方でも、
本屋で「楽典の本」を購入し、「ト音記号の書き方」なんてのから独学しました。
結局、一年くらい経て、漸く「原始人」から「原住民」位のレベルへと進化し、
やがては「人間レベル」の会話とレッスンを受けれるようになった次第でした。
ピアノ上達の速攻方法として「ハノン」を選択
「音楽理論」や「ソルフェージュ」の能力が「原始人並」と判定された僕でしたが、
僕自身が気にしたのは「ピアノの腕前」。
通っていた田舎の高校でこそ「ピアノの天才(笑)」なんて呼ばれていましたが、
「専門に勉強している」生徒や先生の前ではどうなのか?
「専門的に勉強」を始めた高校一年生時点で、僕は近所のピアノの先生に通い、
「チェルニー40番」「バッハ/インベンション」「ソナチネ」という全音グレードの「中級」
を習っていました。
流石の僕でも、音大のピアノ科を目指すような女の子達は、高校生ともなれば
「上級」の「ショパン」の難曲を弾きまくる、とは知っていたので、
これではダメだ、とは思ってました。
尤も「専門的な先生」に見てもらうと、これまた「基礎的な事がいい加減だ」と判定されましたが、
慰め顔で、まぁ、「作曲科」の「副科ピアノ受験」程度はなんとかクリアできるかも知れない、
とは言われました。
尤も「音大受験」という観点では済ませれても、将来は「作曲家」ではなくプロの「ジャズピアニスト」を目指した僕としては、それでは困りました。
なるほど「ジャズピアニスト」には、セロニアス・モンクとかマル・ウォルドロンのように「クラシック的には大して弾けないが偉大なジャズピアニス」は存在します。
(実際にはモンクは元々は超絶技法のストライドピアニストだったらしいですが)
マル・ウォルドロン/オール・アローン(歴史的名盤)
https://youtu.be/5wYyMG2KerQ
しかし僕が目指すのはキース・ジャレットやリッチー・バイラークような
「クラシックが基盤」としてあるピアノスタイルでした。
https://youtu.be/NSYnjRGgrBI
リッチーは一日8〜10時間くらい練習し、
音階やバッハ、ベートーヴェンやショパンのようなクラシックを6時間、
残りで「ジャズ即興」の練習をする、という話。
要するに「ショパンの練習曲」くらいは当たり前のように弾けないとダメだ、
ショパンやドビッシーにも熟達し、音大ピアノ科の連中とも、
互角の「会話」が成立するような腕前にならなければ駄目だ、自己目標を定めました。
尤も現実の僕は「チェルニー40番」やら「ソナチネ」だからお話にならない、
せめて次のステップの「チェルニー50番」や「ソナタ」を終え、
早く「上級」にならねばならない、と自分に言い聞かせました。
尤も当時の音大ピアノ科を受験するような女の子は高校生ともなれば、
「ピアノ科」受験ならば一日八時間の練習は当たり前、
僕の場合、本筋の「音大受験用の作曲関連の勉強やレッスン」、
基本的な「ソルフェージュのレッスン」に通わねばなりません。
まぁ高校は、勉強こそ「放棄(笑)」するにせよ、勝手に休む訳には行かず、
「男女交際(笑)」等の「必要経費的な時間」も必要だから、
「ピアノ練習」には一日四、五時間程度しか充てれない計算になります。
何れにせよ「ピアノが最も早く上達する方法は何か?」を考える必要があり、
結局、徹底的に「ハノン」を練習するのが効果的ではないか、と結論付けました。
それで毎日、二時間半くらいかけて「ハノン」全曲を弾き通す訳ですが、
曲ごとに「調」を半音づつ上げ、二十いくつかの「変奏」を当てはめ、
兎に角、六十曲位を弾き通す事を一年365日やる訳ですね。
それが終わった後、「チェルニー」や「バッハ」「ソナチネ」を練習。
そういう練習を高校生から始め、音大生時分も、その後の二十代実は高校生から始めた「毎日ハノン」の日々を十代と二十代の間、続けました。
その結果どうなったか?
幸い「チェルニー」は「40番」から「50番」に、「バッハは二声のインベンション」から「三声」、「フランス組曲」、「ソナチネ」は「ソナタ」〜モッァルトやベートーヴェンという具合に「進級」して行き、やがてドビッシーやスクリャビンみたない「近代音楽」も弾かせて貰えるようになりましたが。
しかし、その辺りで止まってしまった事はともかく、本当の意味で「ピアノが上達」したのか、
と言えば、やはり違うんですね。
10年以上「ハノンの練習」を続けて進歩したのは「ピアノの技能」ではなく、
単に「ハノンが上達した」というだけ、とも極論できましょう。
勿論、「ハノン」にも色々な効用がありましょう。
しかし、色々な問題もある訳です。
という訳で次回「ハノンの効用」についてお話しましょう。
つづく
Kimball Piano Salon 音楽教室主宰/藤井一成
大阪梅田芸術劇場北向かい 電話(0705)-438-5371
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