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ジャズの「オフビート感覚」をクラシック曲で学ぶ [Lee Evans Society]

日本人独特のゲイシャやリキシャマン的ビートから脱却すべし!

前回「日本人にはピアノのアフタータッチの感覚が欠落している」という事と「アフタータッチを意識しないのは、オフビート感覚がないからだ」とお話しました。

問題の「オフビート感覚」ですが、「ビート(拍)」に「オン」と「オフ」がある事位は知っている方は少なくありませんが、実感としてビートに「オン」と「オフ」を感じたり、具体的に演奏できる方は多くないようです。

「ビート」の「オン&オフ」なしで、ナメクジのように横に流れていく演奏を、「ゲイシャ・クラシック」とか「リキシャマン・ジャズ」と称する日本的エキゾチックで売る、という発想も悪くはないでしょう。

しかし、お隣の中国から、日本人よりは「ビートのオン&オフがある」演奏家が大量に生み出される昨今、「ゲイシャ・クラシック」では世渡りできませんので、「ビート感覚」の基本は習得して頂きたいものだと思います。

「オン=落ちる」「オフ=上がる」が「ビートの基本」

詳しくは別な機会にYouTube動画でお話しますが、「ビート」の「オン&オフ」は、例えば、腕を「上げる」「下げる」と同じですが、得てして日本人の場合は、「下げる」方に力が入ってしまいます。

これがピアノ演奏の際には「モグラ叩き奏法(笑)」と呼ばれる日本独特の変な弾き方になる訳ですが、「モグラ叩き」が嫌な人は単に鍵盤を這うだけの「ナメクジ奏法(笑)」になってしまいますが、どちらも「ピアノ本来の弾き方」ではありません。

実は「鍵盤を弾く」には力は不要です。単に腕を落とせば鍵盤に落下しますが、逆に「鍵盤から離す=腕を上げる」には筋力が必要で、演奏とは、この「落下(弛緩)」と「引き上げ(緊張)」の繰り返しになります。

ところで、日本人の場合、得てして「モグラ叩き」のごとく「鍵盤を叩く」か、ナメクジのごとく「鍵盤を這う」しかなく、これでは美しい音も、力強い音も出せません。

勿論、日本人でも、そうでない「ピアノ本来の弾き方」ができる方も少なくなく、そういう人達は、いわゆる「うまいピアニスト」なのですが、「うまい」から「本来の弾き方」ができるのではなく、「本来の弾き方」ができるから「うまい」訳です。

つまり「ピアノをうまく弾く」には「本来の弾き方」が必修ですが、前回もお話しましたが、「何々奏法講座」的には「弾き方」のみを取り出して訓練する事は、間違いではないにせよ、根本にある「音楽性」つまり「ビート感覚」の理解と訓練を優先させるべきです。


ビートの「オン=フレーズの終わり」「オフ=フレーズの始まり」

ところで「ビートのオン&オフ」ですが、ジャズだろうがクラシックだろうがロック、ボサノバ等々、欧米の音楽ならば絶対に存在します。

一拍の中にも「オン&オフ」があり、四拍子は奇数拍が「オン」で偶数拍が「オフ」になります。

いずれにせよ重要な点はビートは「オフ」から始まっている、という点です。

例えば「バッハ作曲前奏曲ハ長調」を「ドミ ソド ミソ ドミ」と弾く人は少なくありませんが、それは間違いです。

バッハ.png


この曲は16分音符を最小単位とし、16分音符で「オン&オフ」があり、「オフ」である「ミ」から始まりますので、「ド ミソ ド三 ソド ミド」という具合に音が繋がります。

また「ちゃんとした楽譜出版社から出版されている楽譜」ならば、16分音符が微妙に、上記のように「ド ミソ ドミ」という具合に、寄せて書かれているのがわかります。

僕の「ジャズピアノ教室」に、来られるクラシックピアノ経験者の大部分が「楽譜通りには弾けるが、即興はできない」と言われますが、僕は直ちに、それを「否定」します。

というのは「あたなも即興ができますよ」という意味ではなく「楽譜通り」に弾けていないからです。大多数の人は「楽譜に記されている、微妙な音符の左右の繋がりを無視し、我流でドミ ソド ミソ ドミ」という風に惹かれているからです。

ところで16分音符は、必ずこうなるのか、と言えば、それは違います。

例えばモーツァルトの有名な「トルコ行進曲」を観ますと、曲の冒頭は「シ ラ ソ♯ ラ」とありますが、ここの和音は「Am(ラド三)」です。

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和音が「ラドミ」なのに、そこに含まれない「シ」や「ソ♯」があり、これらを「楽典の本」によれば「刺繡音」と呼ぶそうですが、実はそんな事はどうでもなく、肝心な事は、この「シ」や「ソ♯」が「変位音」である点です。

つまり元は「ラ」なのだけど、上に変化(変位)すれば「シ」になり、下に変化(変位)すれば「ソ♯」になります。

そして「変位音」は元の音である「現位音」に「解決」します。

そして「変位音」と「現位音」はカップルになっており、つまり、この部分に関しては「シラ ゾ♯ラ ドー」と弾くのが正しく、実はリズムの最小単位は16分音符ではなく8分音符だという事になります。

前述の「バッハの前奏曲ハ長調」は16分音符基調の曲であり、これを「16ビートの曲」といいます。

対して「モーツァルトのトルコ行進曲」の冒頭は8分音符基調の「8ビートの曲」という事になります。

但し、この曲は少し進んで「ドレドシ ラシラソ」という部分になると、和音自体は「F♯m(ファ♯ラド♯)」になり、「ド♯ レド♯ シラ シラ」という具合に16音符基調の「16ビートの曲」となります。

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実はモーツァルト音楽は、コロコロと8ビートが16ビートになったり、或いは伴奏は8ビートだがメロディーは2ビート、という具合に色々な「ビート感覚」が上下左右で変化して組み合わされます。

この「トルコ行進曲」を弾く際、「ここは8ビート、ここから16ビート、次は8ビートで等々」と「ビート」を意識して弾き分けてこそ「楽譜通り」に弾いている事になりますが、大多数の人は「楽譜を無視して勝手な弾き方」をしていると思います。

逆に言えば、「楽譜通りに弾ける」つまりは「本来の意味で、楽譜が読める人」は「ピアノをうまく弾ける」可能性が大な訳で、先ずは「楽譜が読む」とは何を意味しているのか、を理解される事が肝要でしょう。

ジャズとクラシックとで「ビート感覚」に違いはない!

ところで「ジャズとクラシックとではビート感覚が違う」と勘違いしている人が少なくありませんが、ジャズに限らず、ロックでもブルースでも、クラシックとなんら変わりません。

勿論「リズムパターン」は異なります。

いわゆる「ロックのリズムパターン」とか「ボサノバのリズムパターン」とかがありますが、これは「リズムを組合わせた結果」できたものです。

いわば「リズム」とは料理で言えば材料、例えば豚肉のようなものですが、これを「生姜焼き=ロック」にするのか、「酢豚=ボサノバ」にするのか、「カツレツ=アレグロ(クラシック)」にするのかは「料理=ジャンル」の違いです。

しかし元になる「リズム=豚肉」は変わりません。

という訳で次回は「ジャズとクラシックとではリズム感覚に違いはない」という事をお話します!


Kimball Piano Salon 音楽教室講師
Lee Evans Society of Japan 代表 藤井一成
http://www.eonet.ne.jp/~pianosalon/Kimball_Piano_Salon


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