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なんちゃってジャズピアノは百害あって一利なし! [レッスン]

前回に続き、僕が主宰する大阪梅田「Kimball Piano Salon音楽教室」での、
「クラシック系の人の為のジャズピアノ」コースのお話。

僕が大阪梅田で主宰する「Kimball Piano Salon」の音楽教室のジャズ科には、
大雑把に分けて下記の三種の生徒さんが来られます。

1,クラシック系ピアニストや音楽講師
2.ポップス愛好者やロックやブルースのプロアマ・ミュージシヤン
3,プロアマ・ジャズミュージシャン

実は、僕にとって「最も気楽に教えれる」のが「プロのジャズミュージシャン」なんです。

ジャズには修得すべき色々な「技術と知識」がありますが、
「プロ・ミュージシャン」ともなれば基本的な事は習得済み。

総体としては、僕よりも達者かも知れない人もおられ、しかし、
僕に長がある特定の「技術と知識」について習いに来る訳。

一方、いわば「弟子入り」する形で「ミュージシャン」なり講師を目指し、
総体的に学びに来られる方がいて、教えるのは面白いけど、
僕の受け入れ体制が小さいので、極僅かな募集のみ。

難問は「なんちゃってジャズピアノ」や「オラオケの女王(笑)」

逆にやり難いのがピアノでいえば「なんちゃってジャズピアノ」、
ボーカルでいえば「カラオケの女王(笑)」やっておられる方。

僕の教室には「ピアノもジャズも全く経験がない人の為のジャズピアノ」コースを
(まだ公開していませんが)設定している位ですから、
レベルが「入門〜初級」である事は全然OK。

と言うか「入門」レベルのレッスンには教室として力を注いでいます。

或いは「子供の時にクラシックピアノをソナチネくらいまで習った。
音楽はJポップしか聴かないが、ジャズピアノを弾いてみたい」なんて言う、
上記2「のポップス愛好者」も全然OK。

困るのが我流が長い「なんちゃってジャズピアノ」や「カラオケの女王」。

正確には、クラシックと違いポピュラー系の場合、
殆どの人が「我流」でずってやってる訳で、
それで行き詰まったから習いに来た、なんてのは普通なのです。

むしろ「行き詰まった」と感じ、「基礎」から学びなおして見よう、
なんて人は僕的にはとても歓迎!なんです。

逆に「行き詰まり」なんて感じず、
「我流」の延長線を求められても、それは無理と言うものです。

でも、それ自体は構わないのですが、
こちらで用意したメソッドは練習せず、
易しく、と言うか「デタラメに編曲した」ビル・エバンスの「ワルツ・フォー・デビュー」
あたりを、いい加減に弾いて貰っても、永遠に「マトモ」な仕上がりになりません。

「カラオケの女王」も、サラ・ボーンの「ミスティ」あたりを「物真似」するのは上手だけど、
きちんと歌詞の発音を練習し、やフレージングを形成したりは苦手。

「基礎」をしっかりと学ぶことが重要

例えば「料理教室」でもマトモな教室ほど、「包丁の動かし方」みたいな
「基礎」を徹底的にやります。

逆に「基礎」はお座なりにして、「世界のメニューのレシピ」なんかを作るのは
「教室」としては「インチキ」としか言いようがないのですね。

ちなみに僕の「ジャズピアノ科」では「基礎」教材として、
リー・エバンスやマーサ・ミアー或いはオスカー・ピーターソンの「エチュード」をやります。

流石にオスカー・ピーターソンは自身のスタイルですが、
米国を代表する教育家であるリー・エバンス等の場合は別。

すなわちリー自身は1960年代に「新主流派ジャズ」のピアニストとしてメジャー・デビューしつつ、
米国メジャーのポップス・ヒットの編曲家やデイレクターとして活躍した経歴ながら、
「基礎(初級用)教材」としては「1920年代のラグタイム、ブルース、ディキーランド・ジャズ」
みたいな「初期ジャズ」のスタイルをしっかりやります。
(下記の写真はリー・エバンス著/藤井一成監修のJazz mataz 日本語版)

米国では、最終的にどんな「スタイル」のジャズをやるにせよ、
「基礎」としては、古典的な「1920年代の初期ジャズ」スタイルをキチンと押さえる、
というのが常識。

日本のようにビル・エバンスやウイントン・ケリーあたりを、
「なんちゃって編曲」で弾くような「インチキ」はやりません。

ちなみに、ロックやブルースのギターをやってきたような人が、
リー・エバンスの「基礎教材」を弾くと、「おっブルースだ! カッコいい!」とか好評。

逆にブルース感覚のない人には「ジャズっぽくない」なんてスルーされてしまいますが、
勿論、悪いのは弾き手。

ところで「なんちゃってジャズピアノ」に慣れている人は、
この種の「基礎」をやりたがらず、「デタラメな編曲」の「ビル・エバンス曲集」だかを、
いい加減に弾くのが「楽しい」らしい。

最終的に「ビル・エバンス・スタイル」をやりたいならば、
上記の「基礎」をしっかり習得し、正しい奏法やリズム感、フレージング等を、
頭の中でも、指の上でも理解できねばダメです。

なんて話をすると「楽器屋さんの音楽教室の講師」あたりからは、
「音を楽しむ、と書いて音楽といいます。音楽は楽しむもので、
堅苦しい勉強を強制させられるものではありません!」
なんて反発が来たりしますけどね。

「音楽」とは「音の道」なのです。

これも蛇足ですけど、中国語本来の「音楽」の語感は、
「音を楽しむ」なんてものではなく、
そもそも「楽」とは「いい加減にやる」という意味ではなく、
「色々な修行を経て到達した境地」という意味なんですね。

そう言えば、僕は一若い頃(1990年代)、台湾に住んでおりましたが、
ある日、台湾人の友達から「今夜は快楽的世界に行く」のだが、
お前はそう言う場所は好きか?行きたいか?と誘われました。

「はい、大変に興味深いです」とか何とか答えると、
車で山の方へ連れて行かれました。

ふもとには歓楽街みたいなのがありましたが、更に奥深い、
全く人気のない所に進むので、これは余程の「快楽的世界」ではないか、
と内心冷や汗をかいておりました。

到着した所は古寺。

うーん、これは大変な「快楽的世界」が密かに行われているのか、
と更に汗をかいておりますと、案内させられたのは「座禅道場」みたいな所。

何の事はない「快楽的」とは「お寺の修行」だった訳で、これはこれで、
良かったような、エライ目にあったような‥。

要らぬ話になりましたが、「音楽」とは「音を楽しむ」ではなく、
日本語的にいえば書道や華道のような「音による修行」という所。

書道や華道を「堅苦しいから嫌だ」「デタラメでもいい。楽しければいい」
なんて否定すればバカかと思われます。

だけど「音楽習得」に関しては「音を楽しむ、と書いて、音楽と言います」だの、
「楽しくなけば(いい加減でなければ)ダメ」なんて真顔で言う人が少なくないのは、
安請け合いの、商売しか考えてない「音楽教室」がまかり通っているからでしょう。

勿論、本来の意味で「楽しむ」事は良い事ですが、
これは表面だけでデタラメにこねくり回すのではなく、
書道や剣道、華道等ののように、「深い精神世界」への到達を目標としてこそ、
得られるものなのです。

そう言う意味で「なんちゃってジャズピアノ」やら「カラオケの女王」なんてのは、
「本当の楽しみ」を知らない。間違った「楽しみ」しか知らない不幸な人と言えましょう。

クラシックピアニスト/レスナーにも上中下様々あり

ところで元は「クラシックピアニスト/レスナーの為のジャズピアノ/ボーカル」科について、
お話してました所でした。

問題は一口に「クラシック・ピアニスト」や「クラシック・レスナー」と言っても
様々あり、正直、僕の教室に合う人と合わない人がいます。

ここで言う「クラシック・ピアニスト」とは音大ピアノ科を卒業したような人ですけど、
幅を広げて「子供の時にクラッシク教室でソナチネ位まで習った」と言う人でも、
僕的には結構歓迎なんです。

ある意味、ハノンやチェルニーやブルグミュラーやインベンション、ソナチネに相当する
「ジャズピアノ教材」が用意しており、それを当たり前に練習して、レッスンで弾けば、
普通に「進歩」できるのですから。

ただクラシック系音大出身のような人の場合、ちょっと、ややこしい。

と言うのは言っちゃあ悪いが音大にはピンからキリがあり、
トップクラスである東京芸大出身の人なんてのは、僕的には非常に教え易いのです。

逆にあまりパッとしない音大出身の人は、そもそも「学ぶ」と言う概念自体が違う場合すらあり。

例えば「生徒が沢山の集まり、教える仕事が忙しいからレッスンを休みます」とか
「ファミレスのピアノ演奏の仕事が忙しいからレッスンを休みます」なんて言うのは、
やはり二流以下の音大やら「楽器屋さんのグレード講師」やらなんです。

対して、一流の人程「良心的」で、「暫く勉強に集中したいので、仕事を休む事にしました」
なんて言うけど、考えて見れば、ラーメン屋さんなんかでも、一流になるような店は、
「スープの味が気に入らん!暫く休業して作り直す!」なんてやる訳。

ちなみに「クラシック・ピアニスト」としてある程度(職業としては成立しないにせよ)
活躍できる人は基本的に「良心的」な人が多く、ダメな人は「私は自分では演奏できないが、
教えるのは上手い」とか訳の分からない事を言う。

別に先生の「教え方」なんて下手な方が良いのです。

本当は生徒の側で「教わり方」を工夫すべきで、それくらいでないと、
クラシックにせよ、ジャズにせよモノにはならない。

しかし「教える内容」を持たない癖に「教え方が上手い」なんて言われると、
「詐欺師かいな」なんて僕は思ってしまいます。


クラシックピアノに取り組みようにジャズに取り組めば「ジャズピアノ」が修得できます

話としては「クラシックピアニスト/レスナー」にはこう言うスタイルのジャズ合います、
とか、「こうやって勉強すればいいです」なんて事を書くはずでしたが、
「なんちゃってジャズピアノ」の事を思い出して書き始めて以来、話が脱線しちゃいました。

次回は、そう言う話を書きたいと思いますが、今回の最後としては、
「学ぶことの心構え」みたいなモノになりましたので、
これの「クラシック・ピアニスト/レスナー」版を書いて〆ましょう。

基本的に「クラシックの経歴」がある事はとてもプラスになります。

よく「クラシックとジャズとでは弾き方が違う」とか
「ジャズを弾くと崩れるのでクラシックが弾けなくなる」なんて言われますが、
そういのは全くの間違い。

僕自身、「今夜はライブで二時間ジャズをやる」なんて昼間は、
あえてバッハやモーッアルト、ショパンみたいなクラシックだけを練習する時があります。

僕は「クラシックピアニス」の看板は持っておりませんので、
人前でクラシックを弾く事はありませんが、クラシックをしっかり練習(勉強)する程に、
自然と「ジャズ技術」が上がります。

よく「ジャズ固有のリズム」とか「ジャズ独特の響き」なんて言いますが、これもウソ!

実はバッハ以下「楽聖」と呼ばれる人達は、何世紀も先に進んでおり、
すでにビル・エバンスやキース・ジャレットみたいなサウンドをモノにしていました。

まぁ時代の「趣味」があるから、表向きには「モダン・ジャズのハーモニー」や
「ジャズ・ビート」なんてのがベートーヴェンのピアノ・ソナタの「表面」には見えません。

しかしコンソメ・スープのように、いわば「モダン・ジャズのハーモニーやビート」が
裏では溶け込んでいるから、ハイドンにせよ、シューベルトにせよ、豊かな響がします。

サリエリと言えば、「モーツァルトを毒殺した」と言う噂で「歴史に名を残す」事になりますが、
この毒殺は根も葉もない事実。社会的にも大成功し、また慈善事業にも熱心な人格者でしたが、
音楽自体はツマラナイ。

「ソナチネ・アルバム」に出てくるクレメンティやらクーラウ、ブルグミュラー、
チェルニーなんかと同様に平面的で、18世紀の音楽でしかない。

対してバッハ、ヘンデル、ラモー、ハイドン、モーッアルト等々の「楽聖」の音楽は、
全然別物で、何世紀も先を行ってます。

端的には「バッハの平均律ピアノ曲集」や「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ集」だけを
「教材」にして「ジャズピアノのハーモニーや即興技術の修得」が可能です。

ベートーヴェンとキース・ジャレットが全然別物に聴こえてしまうのは、
実は「クラシックピアニスト」だからではなく、「クラシックを表層しか聴いていないから」であり、
本当に「理解」できるようになると、ハーモニーやリズムは変わらない、と感じるようになります。

したがって「ジャズを勉強する」程に「クラシックへの理解」も高まります。

「ジャズとクラシックは全然別なものです!」なんて事を、
「ジャズ」をやった事のないクラシックの人や、
逆に「クラシックをやった事がないジャズの人」が言うのは勝手だけど、
ある程度以上両方を勉強した人は「大して違わない」と言う筈なんです。

全く違うのは、クラシックとは「作曲家の意図を探っていって演奏する」に対し、
ジャズは「演奏しながら作曲する」事。

モーツァルトやショパンの楽曲を「ジャズ化」したCDもありますけど、
こう言う事を平気でやる人というのは、クラシックもジャズも本当には理解できてない、
二流のプレーヤーであって、マトモに聴くべき音楽とは到底言えません。

なんて事を長々と書いてしまいましたが、
結局の所、「真面目にクラシックピアノに向かい合う」事ができる人が、
「クラシックの時と同じようにジャズに向き合う」ならば、
何らかの意味がある音楽ができます。

逆に言えば「クラシックを真面目にやらなかったクラシックピアニスト/レスナー」というのは、
やっぱりジャズに移ってもダメなんです。

ダメだからお断り、という意味ではありませんが、
この際、ジャズの勉強を通して、逆にクラシックを勉強し直す、
というのも良いかと思います。

という訳で、次回こそは「クラシックピアニスト/レスナー」向けの
ジャズピアノのお話。

つづく

Kimball Piano Salon 音楽教室 主宰 藤井一成 

ジャズピアノ科、ジャズボーカル科 ジャズ教育科(クラシックピアノ教室でのジャズ教育)、
受講生募集中! 月謝八千円から
http://www.eonet.ne.jp/~pianosalon(2021年2月よりURLが変わりました)



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