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ジャズの原点は「歌」と「集団即興演奏」というお話 [音楽スタイル]

前回「Lounge Jazz」についてお話しましたが、
考えてみれば、僕が「ジャズピアノ」を始めた頃は、
「Lounge Jazz」なんて全く興味がなかった事を思い出しました。

志望はドラムやベースやサックス等との「セッション」を、
1日も早くできるようになりたい、という事。

皮肉な事にクラシック系音大では、
作曲やピアノよりも、
専門ではないのだけど「声楽」にハマっておりましたが。

山下洋輔トリオでジャズにハマる

僕は公称(笑)、中学生時分よりバド・パウエルやマル・ウォルドロンみたいな
「モダンジャズ」にハマった、という事になっていますが、
本当に心の奥まで揺すられた、つもり自分なりに「わかった」のは、
山下洋輔トリオの音楽なんです。

山下さんは日本の「フリー・ジャズ」の鬼才。

フリー・ジャズとは、それまでの「音楽の規則(?)」を無視して、
自分の好き放題に演奏できる、という1960年代に出現し、
僕が中高生だった1970年代後半でも「現在進行形」だった音楽です。

ちょっと山下洋輔さんの音楽を聴いてみましょう。

70年代後半のスイス・モントルゥー・ジャズ・フェスティバルでのライブ
https://youtu.be/MvfEuteYRj0

最近の山下さん
https://youtu.be/ADe2-zJz1Lc
https://youtu.be/8zQDeTdstU4

これを聴いて「いっぱい飲みたいですなぁ」なんて呑気な事をいう人はいないと思います。

多分、「なんだこりゃあ!」と拒否反応するか、逆に「ウォー、これはゾクゾク来たぁ」と
なるかのいずれ。

大概の人が拒否する筈ですが、中学三年生で高校受験を控えて悶々としていた僕には、
なにやら暗黒の雲を吹き飛ばすような、実に爽快な音楽でありまして、
恥ずかしながら「山下洋輔風」にメチャクチャにピアノを叩いて次第。

尤も「ジャズを理論的にも理解」「ジャズ・リズムが理解」できた後、
山下さんの演奏を改めて聴くと、別に「メチャクチャ」という事はない。

大雑把に言えば「Diminished Chord」の拡大で音を選択し、
細かいジャズリズムを上下左右に組み合わせ、
要するに「物凄く上手く」演奏している訳ですね。

とはいえ、膨大な数がある山下さんの著作を読むと、
「フリージャズ」の「入門」として、
楽譜も読めず、楽器もできない人であっても、
例えば太鼓でも、コップでも、なんでもいいから音の出るものを、
皆んなで「感覚」で自由に「合奏」すればいい、とあります。

こういう場合に、音楽理論なんて全く知らなくても、
不思議となんらかの規則性を伴う「合奏」になるらしいです。

それで恥ずかしながら、高校生になった僕は、
自宅で二台のカセットレコーダーを使い、
ピアノ、木琴、リコーダー等で「多重録音」し、
一人で「フリージャズ」の「訓練」をした記憶があります。

そう言えば坂本龍一さんがNHKテレビで「音楽講座」をやられた時、
ゲストの山下洋輔さんの「指導」で、中学生のブラスバンドが、
皆が好き放題に楽器を鳴らし、それと山下さんや坂本さんが「共演」する、
というシーンがありました。

要するに、とりあえず音を出し、他の人とバランスしつつ、
全体として音楽を作っていく、というのが「フリージャズ」であり、
ある意味「ジャズに限らず音楽の原点だ」という考えでした。

だから僕が音大生となって以来、「ジャズピアノ」を志望した際に、
当然の事として「集団即興演奏」という事がイメージにありました。

早くドラムやベース、サックスなんかと「セッション」したいな、と思ったし、
実は訳がわからないまま、訳がわからないもの同士で「バンド」を組んで、
「ライブ活動(?)」を開始するのが二十歳の頃ですが、その話は後述。

もう一つの原点は「歌」にある

ところで上記NHKの番組でも山下さんはひたすらに「集団即興」を説かれ、
心の縛り(?)を解放すれば自由に音が出せます、みたいな話をされておられました。

そう言えば、1970年代から80年代にかけて、
山下洋輔トリオは日本は元より、ヨーロッパでも絶大な人気を誇り、
もともと「フリージャズ」が盛んだったドイツ等では、
山下さんのスタイルがドイツの「フリージャズ」界に相当な影響を与えた、とも言われます。

当時の「東西を分ける壁」という精神的な緊張が、
山下さん他の「フリージャズ」を求めた、という事があったかも知れませんが、
当時の西ドイツはともかく、東ドイツでは、「フリージャズ」は当局からは歓迎されず、
しかし、その分、東ドイツの観客からは熱狂を持って迎えられたそう。

山下さんが著書で述べられておられますが、
当時の東ドイツのミュージシャンには、色々と当局の制約が付きまとい、
自由に「表現」できなかったそうで、「自由に表現できる日」がくる事を願った、との事。

問題は「ベルリンの壁」が崩壊し、東ドイツが消滅、自由に表現できるようになって以来の
「フリージャズ」の在り方。

簡単に言えば「誰も聴かなくなった!」。

そういう僕が、山下さんのスタイルは「マンネリ」だなぁ、と感じてしまい、
むしろオーソドックスなビル・エバンスみたいなスタイルの方が「刺激的」
だと思えるようになりました。

尤も山下さんも、色々と手を変え品を変え、新しいスタイルを模索されてようですが、
依然としてファンが多いのは、早い話、聞くと、やっぱり良いからなんですね。

基本的には「ジャズの基礎技術」が物凄く高いし、色々と事がわかっている人だから、
僕なんかは聴いてて飽きない。まぁ、あまり聴きたいとも思わなくなってますけどね。

尤も「山下派」みたいな若いピアニストも増えているな、と思います。

高木里代子さんの演奏
https://youtu.be/i9VD8nnFEv8

スガタイローさんの演奏
https://youtu.be/C-M109ISeR4

多分、これは良い事でしょう。少なくとも「アリ」だと思いますね。僕はやらないけど。

ところで、山下洋輔さんは、あまり言わないのですが、
「ジャズ」の原点は「集団即興」と共に「歌」だと僕は思います。

そもそも山下さんは、ああいう風にガンガンに弾きまくりますが、
いざスローバラードなんかを演奏すると物凄くうまいし、
「歌」についても物凄くわかっておられる。

女優の高岡早紀さんの伴奏をする山下洋輔さん
https://youtu.be/PRJoqzOnyAA

「ジャズ」の「集団即興」を原点として爆発させたのが「フリージャズ」ならば、
もう一つの原点である「歌」を拡大したのが「Lounge Jazz」だと僕は思います。

次回は「坂本輝先生のレッッ・プレイ・ジャズ」シリーズの話に。

大阪梅田芸術劇場北向かい Kimball Piano Salon 音楽教室主宰 藤井一成

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お問い合わせは電話0705-438-5371かメールで
http://www.eonet.ne.jp/~pianosalon(2021年2月からの新URL)
リンクは山下洋輔トリオの70年代の名盤 ヨーロッパでのライブ


クレイ

クレイ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: 日本クラウン
  • 発売日: 1989/11/21
  • メディア: CD



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