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質問「ジャズピアノを習うと、クラシックピアノ経験がダメになりますか?」 [レッスン]

前回、「クラシックピアニストにお薦めのジャズ」スタイルは、モダンジャズよりも一昔古い「スウィング・ジャズ」の「ストライドピアノ」スタイルだと申しました。

日本では「ジャズ」といえば、ライブハウスでセッションする「1950〜60年代のモダンジャズ」を意味しますが、世界的には、それよりも1世代古い「スウィング・ジャズ」も結構盛んです。日本でも若い人を中心に「スウィング・ジャズ」が盛り上がりつつあります。

僕自身は本来「モダンジャズ」系のピアノ奏者/講師でしたが、「スウイング・ジャズ」の勉強も始め、早十年以上経ち、漸く自分なりの「スウィング・ジャズスタイルのピアノ」が弾けるようになったと思えるようになりました。

かつ「雰囲気=我流」ではなく、技術的、音楽理論的にも体系化できたので、皆さんに対しても、レッスンを呼びかけるようになったですが、そのお陰か色々な方が、大阪梅田にある僕の教室に習いに来られます。或いは「オンライン」でのレッスンを受講されます。

僕の生徒さんと言うのは、大雑把にいえば「クラシック(のピアノや声楽の)経験がある人」とない人とに分かれますが、中級以上の方の大多数は「クラシック経験」があります。

とはいえ「クラシック経験」も「子供の時に近所の教室でソナチネとかを習った」と言う趣味レベルの人もいれば、クラシック系音大を卒業し、クラシック演奏会を主宰される方もおられます。

まぁ、色々な経歴の人が来られた方が面白い事は確かですが、最近、僕も年老いた(笑)せいか、昔に戻る、と言うか「クラシック世界」も重視したいと思うわけでして、いっそ「クラシックピアニスト/声楽家専門のジャズ教室」なんて事も考えなくもないのですが、これも変ですよね。

とは言え、現実に「クラシックピアニスト/声楽家やレスナー」の方の入門(入会)が増えている訳で、かれこれ「クラシックピアニスト/声楽家のためのジャズ」レッスンも力を入れています。

クラシックピアニストには「モダン・ジャズ」よりも「スゥイング・ジャズ」スタイルがお薦め

ところで前回から「クラシックピアニストには、モダンジャズではなくスゥイングジャズ系の方が合致するのか?」というお話を始めていました。

前述もしましたが、このブログで何度も書きましたが、「ジャズ」と一口に言っても「時代別」に様々なスタイルがあり、日本では「ジャズ=1950〜60年代のモダンジャズ」を意味するが、1930〜40年代の「スゥイング・ジャズ」もなかなか良いと。

そして「クラシック・ピアニスト(クラシックピアノ経験が長い人)」には「モダンジャズ」ではなく「スウィング・ジャズ」のピアノスタイルである「ストライドピアノ」がお薦め、とも言いました。

種明かしをすれば、僕の教室に習いに来る「クラシックピアニスト/声楽家」つまりクラシック系音大等を卒業された方というのは、単に「ジャズに興味があるから」と言う軽い気持ちではなく、「できればジャズ系の仕事もしてみたい !」と言う下心(笑)と言うか希望満載で扉を開かれます。

その場合、今更「モダンジャズ」で身を立てる事は難しいから辞めといた方がいいですよ、と実態をお伝えしますが、「スウィグ・ジャズ」ならば充分可能性はある、とお伝えしています。

実は、あらゆる「ジャズ」は、基礎として「クラシック」の技術や知識の上に成立していますが、かと言って、「ライブハウスでセッションしている1950〜60モダンジャズ」の場合は、「クラシック以外の音楽要素」が沢山詰め込まれています。

クラシックの素養が邪魔になる、と言う事は全くありませんが、その「クラシック以外の音楽要素」を今更修得するのは困難でして、趣味で楽しみ程度ならばともかく、職業的な活動を目指すのは不可能に近いとお断りする次第です。

ところが「スウィング・ジャズ」のピアノや歌の場合、もう必要とする音楽技能の80パーセントが「クラシック」そのものなんです。

別な言い方をすれば「ライブとかをやっているプロのモダンジャズ・ミュージシャン」と言えど、「スゥイング・ジャズ」に「転向」しようと思えば、「クラシック技能(経験)」が充分ではないから、敷居が高いのに対し、案外、「クラシックピアニスト」の方が達成させ易い、と言う訳です。

かつ、卑近な話でいえば、「スウィングジャズ系/ストライドピアノ」の方が、「ライブハウスのセッションには合わない」かも知れないが、ホテルやなんかのピアノ演奏の仕事には適する訳で、職業として成立する可能性が少しは高い訳ですね(煽っている訳ではございませんが/笑)

と言うわけで「クラシックピアニスト/声楽家/レスナーの為のジャズ教室」なんて事を大阪梅田で主宰している次第です。

ところで前回は、「なぜクラシックピアニストにはスウィングジャズが合うのか」と言う説明の一環として「スウィングジャズ系ピアノの巨匠アート・テイタムを、20世紀最大のクラシックピアノの巨匠ウラディーミル・ホロビッツ が賞賛した」と言う話をご紹介しました。

今日は「ではホロビッツはテイタムのどの部分を賞賛したのか?」と言う事をお話するつもりでしたが、前回、投稿に対し、早速、メールにてご質問を頂きましたので、その趣旨をご紹介します。

質問「クラシックピアノをずっと続けて来たが、ジャズピアノをやると、自分の音楽が崩れそうで、ジャズに飛び込めない。どうしたものか?」

と言う訳で、今日は予定を変更し、そもそも「クラシックピアノとジャズピアノは両立するのか?」というテーマでお話したいと思います。

ジャズとクラシックは音楽的に物凄く遠いから、足を踏み入れるのが怖い、と言うのがご質問。

ではジャズとクラシックは全く違う音楽なのか?

そういえば直接、先日、ある人から「ジャズ向きのピアノはどう物ですか?」というご質問を頂きました。

面倒臭いので「ジャズ向き?あぁ、それならばベーゼンドルファーだ」と答えておきましたが、実際はスタインウェイだろうがファッオーリだろうが、ベヒシュタインだろうが、要するに「良いピアノ」であれば、クラシック同様にジャズも弾き易い訳です。

これも蛇足になりますが、ベーゼンドルファーといえば、何年か前に「新型」と称する「ベーゼンのボディに、ヤマハのアクションが入ったような(違っていたらご免なさい)モデル」を試奏させて頂きました。

その際に、一時間位、その新しいフルコンのベーゼンドルファーを弾かせて貰える事になっていましたが、僕は十分位、弾かせて貰った後、出てしまいました。

そのピアノのアクションがヤマハ製なのかどうかは不明ですが、メーカーの説明に寄れば「ジャズピアノ等にも対応できる現代的なアクション」とやらが組み込まれたそうです。

では一応「ジャズピアニスト」である僕が、その「ジャズピアノにも対応できる」ベーゼンを気に入ったのか、といえば、むしろ旧来の「ベーゼンのアクション」のモデルの方が弾き易いし、更に言えば、1970年代以前の「ウィーンアクション」の方が思った通りの音が出るので好きな訳です。

1970年代頃まであった、昔式の「ウィーンアクション」というのは、弾き難いが、「音を創流」と言う点では繊細かつダイレクトに指と繋がり、僕としては、どうせベーゼンならば、上滑りするような「ジャズピアノ向き(?)の現代的なアクション」よりも、かってウィーンのクラシックピアノの巨匠ウィルヘルム・バックハウスが愛用していた昔式の方が「弾き易い」と僕は思う次第です

これも蛇足ながら、どうせ「ヤマハのアクション」を使うのであれば、いっそボディもヤマハの方が理にかなっているし、ヤマハなりのバランスの良さももあり、ヤマハはヤマハで僕も結構好きです。

これも蛇足ですが、僕は「戦前のベヒシュタイン」も大好きですなんですね。

メーカー自身は否定するけれども、ドイツの名器ベヒシュタインも戦前と戦後〜今時とでは、相当に変わってしまったと思いますが、やはり戦前にクラシックの巨匠であるルドルフ・ケンプやアルトゥール・ルービンシュタイン、ディヌ・リパッティが愛用していた頃のが僕は好きです。

要するに「ジャズ向きピアノ」なんてものは存在せず、クラシックにも良いピアノは、ジャズ二も良い、という訳です。

なんて言うと「だけど、ジャズとクラシックでは、CDで聴かれるピアノの音が全然違うぞ」と返す人がいます。
ジャズとクラシックではCDのピアノの音が違うのはなぜ?

勿論、整音やタッチの整調が違う時もありますが、「録音の際のマイクセッテイング」が、クラシックとジャズとで違い、ジャズの方がマイクをピアノに近づけて録音するようです。

ちなみにグレン・グールドやCBS時代のホロヴィッツの録音は、ジャズ的と言いますか、マイクをピアノに近い位置にセットした録音でしたし、1960年代頃までは、クラシックもかなりマイクを近づけて録音したようです。

1970年代頃から、クラシック録音は「残響豊かなホール」等で録音する事が増え、そうやって制作されたレコード/CDを「ええ響きやなぁ」なんて言う人が少なくないのですが、響に誤魔化されて、肝心の演奏の細部が聞き取れないので僕は嫌いですね。

そう言えば戦前のクラシック指揮者の大巨匠であるトスカニーニも、録音に祭し、「残響」を嫌い、徹底的に「残響なし」の環境で録音したそうです。

これも蛇足になりますが、東京のサントリーホールやら大阪のイズミホールは「長い残響」がジマンのようですが、下手なピアノも綺麗に響くと言う点は宜しいが、本当の名手の演奏を聴くとなると、この「長い残響」が邪魔になるので、僕は「残響」が加わらない前の方の席で聴くようにしています。

ジャズ特有の「タッチ(弾き方)」なぞない!

ところで「ジャズを始めるかどうか迷っているクラシックピアニスト」にとって、もう一つの悩みは「クラシックとジャズではタッチ(弾き方)が違うのではないか」という問題があります。

実際、ある「ジャズピアノの先生」のレッスンを受けた所、学んできた「クラシックピアノの弾き方」とは違う弾き方を強要され、更には「ジャズの場合、こういうタッチで弾くのだ!クラシックの弾き方をするな !」と叱られトラウマになった、なんて人もいます。

僕はその現場を観た訳ではないので、その「ジャズピアノの先生」がどんな弾き方をしているのかは定かではありませんが、どうせ「ヘタクソなピアノ弾き」だろうな、思います。

尚、それこそ「クラシックと違う感覚」として、ジャズの場合「ヘタクソでも構わない」という価値観もアリな訳で、その「ジャズピアノ先生」が演奏者としてもダメ、とは限りませんけどね。

そもそも何をもってウマい、とかヘタクソを判断する基準は各人様々な訳ですが、敢えて言えば「クラシックピアノの技術」の多い少ない=「上手/下手」の基準と言えましょう。

そして「クラシックピアノ経験が全くない」まま「プロのジャズピアニスト」になった方も少なくなく、且つ、その方が演奏家として素晴らしい、と言う事もありましょう。

但し、僕自身は長年「クラシックピアノ」トレーニングを積んでおり、あまり大きな声ではいえませんが(笑)、僕の所に「ジャズピアノを習いに来た」ついでに、僕から「クラシックピアノのレッスン」を受ける音大ピアノ科卒の人も案外少います。(注/僕自身のクラシック・レパートリーは極めて限定的ですけど)

要するに「ジャズ固有の弾き方」なんぞ存在しません。但し、敢えて言えば「クラシック的な音色」を有さないジャズピアニストも少なくないが、まぁ、大体の「上手いジャズピアニスト」と言うのは、クラシックもそれなりか、それなり以上ら弾ける人が少なくないと言う訳ですね。

これも予めてお断りましが、僕のピアノの弾き方というのも、「日本のクラシックピアノの弾き方」しか知らない人からすれば違和感があるかも知れません。

その理由は僕が「変」なのではなく、言っちゃあ悪いが「日本のクラシックピアノの弾き方」が「変」と言いますか「欧米の正統的なクラシック演奏法」とはかけ離れているからだからです。

僕の弾き方は「欧米のクラシック演奏法」からすれば「普通」な筈です。

結局の所、「ジャズ固有の弾き方」なんぞ存在せず、「日本人独特の変な弾き方」ではなく、「欧米の正統的なクラシック奏法」であれば「正しいジャズピアノの弾き方」ができる、と言う訳です。

敢えて言えば、僕のところで「正しいジャズピアノの弾き方」を修得されれば、自然とモーッアルトだろうがショパンだろうが、より美しく、表現力豊かに弾けるようになる、と言う訳です。

「ジャズピアノ教室に習いに行ったから、クラシックが下手になった」なんて事があれば、その「ジャズピアノ教室」はインチキだと言えましょう。
ジャズ固有のリズムに乗れないのだが、というお悩み結論、「ジャズピアノを習った事でクラシックも上達」するのが本物

なんて事を色々と書きましたが、要するに「正しいジャズピアノの先生」の場合は、
「長年習ってきたクラシックピアノの感覚」が駄目になる筈がなく、また「ジャズとクラシックを分けて考える必要すらない」事を理解させて貰えると思います。

「クラシックとジャズとでは弾き方やリズムが違う」とか「クラシックとジャズとでは音楽理論が違う」なんて言う先生がいるとすれば、所詮は「ニセモノ」でしょう。

「クラシックの先生」が「ジャズは違う」なんて言われたとしても、それは致し方ない。
「クラシックの先生」が「ジャズについて知らない」のは当然だから。

しかし「ジャズの先生」が「クラシックとジャズは違う」と安易に言うとすれば、その先生の「ジャズ」自体を疑うべきです。

真摯に勉強すれば、ジャズというのは、クラシックの技術や理論の延長線上にある事が理解できるからです。勿論、「クラシック経験や技能なし」に素晴らしいジャズ演奏をすることは可能ですが、そういう人の場合、教える相手を選ぶ(クラシック経験がない生徒)に限定すべきでしょう。

おっとなんの事ない、同業者の悪口(笑)で話が終わってしまいましたが、要するに「クラシックもジャズも本来は同じ」なわけで、「クラシック経験が長い人」も安心して「ジャズ」を習って頂きたいと思います。

という訳で「ジャズピアノの巨匠アート・テイタムとクラシックピアノの巨匠ホロビッツについて」は次回に続きます。

尚、僕のレッスン(リアルは大阪梅田、オンラインは全国どこでも可能)へのお問い合わせ等は、ホームページからメールで頂けるとありがたいです。或いは電話もOKですが、詳しい事をFace-timeやLine等でオンラインでお話しする事も可能です(要予約)。ではでは次回 !

大阪梅田芸術劇場北向かい Kimball Piano Salon 音楽教室 主宰 藤井一成
電話(070)5438ー5371 http://www.eonet.ne.jp/~pianosalon

写真は僕ですー
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