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「ガーシュイン・ジャズ」に基づく「ポピュラーピアノ」レッスン [レッスン]

前回はクラシック系音大に通いつつ、「ジャズピアノ」を独学しようとした僕が、
「ジャズ初心者」に最適な教材として坂本輝先生の「レッス・プレイ・ジャズピアノ」
シリーズを使い始めた、という話をしました。

「レッツ・プレイ〜」が画期的だったのは、
今となっては当たり前だけれども、
当時は少数派だった「ジャズ教育」という概念を提唱した事。

「ジャズは感性でやるもの」とか「ジャズは学ぶものではない慣れるもの」
「コビーして真似をすればできるようになる」等の「文盲」が当時の常識。

そうではなく「読む」「書く」「弾く」をバランスした勉強や練習を続ける事が、
唯一「ジャズピアノが弾けるようになる方法」だと提唱した訳ですから痛快でした。

画期的だったもう一点は、「ジャズ初心者向け」教材ながら、
「ジャズ・スタイル」のサウンドで編曲されていた事です。

何をもって「ジャズ・スタイル」と呼ぶのかについては人様々でしょうが、
1980年頃の大阪の楽譜屋さんで購入できた「初心者向けジャズ・ピアノ教材」の殆どが、
「ジャズ」とは呼べない「インチキ」な代物でした。

以前、別な所にも書きましたが、
例えば「ギロック」や「リー・エバンス」等の「初心者向け教材」は、
いわゆる「モダンジャズ」のスタイルでは作曲されていないので、
「ジャズ」ではないと宣う御仁もおられます。

そうではなく、「ギロック」は1920年代の「ニューオリンズ・ジャズ」で、
「リー・エバンス」は「ティンパンアレイ」等の「初期ジャズ」の、
それぞれ「正統的なスタイル」で作曲している訳です。

(ちなみに「リー・エバンス」が本領を発揮するのは、
彼がデビューした1960年代の「モードジャズ」でですが)

それらと僕がティーンの時に購入した「ジャズ名曲集」は本質的に異なり、
表紙や挿絵にはマル・ウオルドロンやウィントン・ケリーと言った
「ジャズピアノの巨匠」の写真が用いられ、
いかにも「モダンジャズ」のピアノ編曲本という装丁とタイトル。

それで「今度こそは」と期待して家に帰ってピアノで弾くと、これが
全然「ジャズ」ではない、初歩的な「三和音」による、
精々「ポピュラー・ピアノ」と呼ばれる代物だったんですね。

今の僕ならば、譜面をチラッと見れば、それが「ジャズ」なのか、
「ポピュラー」なのかは判断できますが、当時は実際に弾いてみる迄、
判別が付かない程に僕は無知だった訳です。

「歌謡曲調ポビュラーピアノ」と「本物のポピュラーピアノ」は別物

ところで「ポピュラーピアノ」の話が出ましたので、
「ジャズピアノ入門」の話からは全然脱線するのと、
大阪梅田で展開している僕の「ジャズピアノ教室」の内容と無関係ではないので、
今日は誤解なきよう「ポピュラー・ピアノ」についてお話ししましょう。

そもそも「ジャズ」と「ポピュラー」とは、どう違うのか?
という事もご存知でない方もおられましょうから、
説明しますと実は「ジャズ」は「ポピュラー」の一瞬とも言えます。

即ちジャズのみでなく、ロックやフォーク、ラテン等をひっくるめて、
いわゆる「クラシック」とは別な音楽として「ポピュラー」とも呼びます。

但し、ここでいう「ポピュラーピアノ」は「ジャズピアノ」と
異なる、しかし正統性のある音楽スタイルを意味します。

狭義の「ジャズ」とはボーカルではない、楽器によって、
「即興演奏」を主体とする音楽となります。

対してここでいう(狭義の)「ポピュラー」は翻訳すると「流行歌」となり、
ボーカル主体で、「編曲された合奏」による伴奏がつきます。

従ってドリス・ディやフランク・シナトラ等の大歌手も、
ここでは「ポピュラー」という分類になります。

ちょっとドリス・ディを聴いてみましょう。

moon glow/Doris Day
https://youtu.be/-qlbOlXKaQ0

いかがでしたか如何にも「ジャズっぽい」サウンドだと思いませんか?

しかし、これは前述の定義に因れば狭義の「ジャズ」ではなく、
「ポピュラー」に分類されます。

ところで、後年、僕は「日本を代表するジャズ教育家」であられる
稲森泰利先生の教材に出会い、私淑という形で、10年くらいかけ、
稲森先生の全教材と全編曲を一応の習得する事になります。

そういう意味で相当に影響を受けた稲森先生の教材ですが、
稲森先生の「メソッド」には、狭義の「ジャズピアノ」と共に、
稲森先生の命名では、「ジャズ・スタイルのポピュラー・ピアノ」と
呼ばれるスタイルが存在しました。

この稲森先生が定義〜命名の「ジャズ・スタイルのポピュラー」とは、
上記の「ポピュラー」であり、実は、これこそが「本物のポピュラー・ピアノ」なのです。

これは日本でいえばホステスさんがいるような「ラウンジ」やレストラン等でBGM演奏される、
気色の悪い「歌謡曲調ポピュラー」とは全く別物となります。

ポピュラーピアノの偉人カーメン・キャバレロ

「本物のポピュラーピアノ」、つまりは稲森先生が定義された
「ジャズスタイルのポピュラーピアノ」と言えば、
僕は「愛情物語」が大ヒットして「カーメン・キャバレロ」を思い出しますので、
一寸聴いてみましょう。

カーメン・キャバレロの来日公演
https://youtu.be/T94GO34aTC4

ちなみに映画「愛情物語」の原題は「エディ・デューチン物語」で、
エディ・デューチンの伝記なのですが、第二次世界大戦前〜戦中にかけて
活躍してデューチンのレコードは日本には入らなかったので、
日本ではデューチンの名前は殆どの知られていません。

しかし映画「愛情物語(エディ・デューチン物語)」でエディ役を演じた
カーメン・キャバレロの演奏スタイルは、実は殆どデューチンから
受け継がれたものなのです。

忘れてはならないエディ・デューチンの功績

デューチンの演奏を聴いてみましょう。
デューチンのソロピアノでスタンダード名曲
https://youtu.be/ybG7IHH-euk

確かにエディ・デューチンのスタイルには、
日本で「ジャズ」を意味する「モダンジャズ」の影響はありません。

なぜならばデューチンの時代には「モダンジャズ」は未だ生まれなかったからです!

しかし「スゥイング・ジャズ」の全盛期であり、
デューチンの楽団はやはり「スゥイング・ジャズ」スタイルを取ります。
https://youtu.be/akPhfmRM-v8

但し「ジャズ」に詳しい方ならば「スゥイング・ジャズ」で有名な、
ベニー・グッドマンやカウント・ベイシー、デュークエリントン等の楽団と、
エディ・デューチン楽団の雰囲気は微妙に異なる事に気づくと思います。

ガーシュイン/ポールホワイトマンからの継承

しかし、これはデューチン楽団が悪いからではなく、
1920年代に「ジャズの王様」と呼ばれた
ガーシュイン&ポール・ホワイトマン楽団がこういう雰囲気だったからです。

ガーシュイン/ホワイトマン楽団による「ラプソディ・イン・ブルー」
https://youtu.be/oadzppD9Rv8

「なんだかクラシックみたいな雰囲気だな」と思われるかも知れませんが、
そもそもホワイトマン自身「クラシックのバイオリン奏者」であり、
またガーシュインも狭義の「ジャズピアニスト」ではありません。

しかし彼等が「ジャズを創生」した一人であった事は確かであり、
後のカウント・ベイシーやデューク・エリントンにも影響を与えていますが、
ある意味、ホワイトマンはエリントンよりも「スゥイングしてない」とも言えます。

これがホワイトマンが劣った、という意味ではなく、
基本的に「ダンスの音楽」という位置付けがあり、
エリントンよりもホワイトマン楽団の方が、
一般の米国白人には「踊りやすかった」とも言えましょう。

ガーシュイン・ジャズの正当性を引き継いだのが「ポピュラーピアノ」

ところでエディ・デューチンですが、
ガーシュイン/ホワイトマン楽団直系の「ジャズ」を正統に受け継ぎ、
独自の発展をさせた訳ですが、それを更に発展させたのが
カーメン・キャバレロです。

何れにせよ「ガーシュイン・ジャズ」という「基礎」があるのが、
カーメン・キャバレロつまりは「本物のポピュラー・ピアノ」と言えましょう。

これも別な機会にお話ししますが、僕の大阪梅田にある「Kimball Piano Salon」音楽教室
には「モダンジャズ」ではない、「ガーシュイン・ジャズ」を専門に学びコースがあります。

どちらかと言えば「クラシックピアノ経験が長く」しかし「ジャズ経験は皆無」という方を
対象としますが、元々の話であって「ピアノもジャズも経験がない」方が、
この「ガーシュイン・ジャズ」を目指した場合、「初級」としては何を学ぶべきか?

これは、やはり1920年代の「初期ジャズ(ガーシュイン・ジャズ)」のスタイルで作曲された
「リー・エバンス」等の教則本でピアノとジャズを学ぶべきなのです。

或いは「本物のポピュラー・ピアノ」を目指される方も、
「日本の歌謡曲」ではなく、「ガーシュイン・ジャズ」の基礎から学ぶべきなのです。

ところで稲森泰利先生が定義された「ジャズ・スタイルのポピュラーピアノ」ですが、
ややこしい話ですが、カーメン・キャバレロに代表される「ガーシュイン・ジャズ」
を基調とすると共に、1950年代の「モダンジャズ」を基調にする物とかあります。

実は僕の教室では前者を「ガーシュイン・ジャズ」とか「ポピュラーピアノ」と呼び、
後者を「Lounge Jazz」と呼んでいます。

次回は「Lounge Jazz」についてお話ししましょう。

PS;それにしても「坂本輝先生のレッツ・プレイ・ジャズピアノ」シリーズの話から、
というかそもそもの「ピアノもジャズも経験がない人の為のジャズピアノ」レッスンとは、
どんどん離れてしまってますねぇ。悪しからず。

リンクは稲森泰利先生の「ポピュラーピアノ」教則本

大阪梅田芸術劇場北向かい Kimball Piano Salon 音楽教室 主宰 藤井一成
http://www.eonet.ne.jp/~pianosalon(2021年2月からの新URL)


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