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スゥィング・スタイルからジャズピアノ/ボーカルを始めるレッスン 大阪梅田CC音楽教室 [チャールストン倶楽部]

前回に続き,僕が大阪梅田にて主宰するジャズピアノ/ボーカル教室「チャールストン倶楽部」での
「オールドスタイル」と呼ばれる1940年代の「スゥィング」以前のジャズピアノやボーカル・レッスン
のお話。

今だから明かせますが,CC音楽教室でのレッスンを,僕達の基本方針である
「体系的なレッスン」にまとめてしまうのはとても困難に思えました。

僕自身は元々「ラウンジ・ジャズ」というスタイルを提唱するピアノや弾き語り奏者であり,
そのスタイルの習得を目標とするレッスン活動をかれこれ二十年程続けて参りましたが,
「ラウンジ・ジャズ」も1950年代以後の「モダンジャズ」が基本であり,逆に言えば,
それ以前の「スゥィング」等については殆ど触れぬまま来てしまった次第です。

蛇足ながら「ラウンジ・ジャズ」という呼び方も(同じ呼称を用いる方は少なくないですが)
僕自身のスタイルに関しては僕の造語ですが,「ライブハウスでセッションする」というよりは,
「ホテル・ラウンジ等でピアノ弾き語りを聴かせる」音楽というのが実際でしょう。

ちなみに日本では「ラウンジ」ピアノなぞと言えば,何やら歌謡曲風の,
ドロドロしたピアノ演奏がイメージされかねませんが,
本来は「社交ダンス(ボールルーム)」の音楽を意味します。

「踊れる」「歌え」が条件で1920年代の「ジャズの王様」ポール・ホワイトマンや
ガーシュイン以来の「ダンスができるジャズ系音楽」を欧米では指します。

僕はこの手の仕事を音大の学生だった頃から始めましたが,
内心,こういう職種が大嫌いで,何とか音楽のスキルを習得した後,
楽器メーカーや音楽スタジオの職にあり就きそれなりに充実しましたが,
三十才過ぎの時,海外に居を求めた際,取敢えず「でもしか」仕事として
アパートの近所にあった高級ホテルの「バーのピアノ弾き」稼業に逆戻りするしかなく,
遂に「これが天職か」と諦め漸く「ラウンジ・ジャズ」として精進を開始しました。

尤も何やらインチキ臭い演奏でも稼げた国内とは違い,
それなりにちゃんとしたジャズやポピュラー・ピアノのスキルが求められた米国人相手の
演奏という事で,真面目にやると毎日何時間も勉強しても追いつかない程。

そもそも「一体何をどう勉強すればいいのか?」も分からない。

どうも「ラウンジ・ジャズ」というのは1950年代のナット・キング・コール・トリオやら
オスカー・ピーターソン,エロール・ガーナー等のジャズピアノ,或はカーメン・キャバレロ等の
ポピュラー・ピアノ,ペギー・リー,ドリス・ディ,フランク・シナトラ等のジャズ系エンタティメント・
ボーカルが基本だと分かりましたが,「どう勉強すればそれらを習得できるのか?」不明。

幸いにも日本には国際的にも評価される「ジャズ教育の大家」稲森泰利先生の一連のメソードがあり,
それを習得するだけで充分プロとしてのスキルは得れる,とは分かりました。

尤も教則本がドーンとあり,一ページから読み進めれば習得できる,という訳でもなく,
自分なりの吸収や練習方法を開発せねばならず,或は1990年代初頭とはいえ,
国内には稲森先生のメソードのみならず,米国のリー・エバンス先生や,
「ジャズ和声学」では塩沢修三先生の極めて高度なメソードが流通していた訳で,
それらをふっくるめて独学を始めました。

別にヒトに教えたい訳ではありませんでしたが,
自分が習得する段階で自動的に「教えて欲しい」というヒトが集まり,
又,現地のヤマハ等の音楽教室や音楽学校から講師の依頼があり,
ピアノ演奏稼業は夜にやるとして,午前中は「講師養成セミナー」なぞを
させて頂き文武(?)両道な日々。午後は昼寝するか自習するか,
時々持ち込まれる作編曲や契約した企業の音楽プロデュースの仕事をする,
というお気楽な月日が自然と僕自身の「ラウンジ・ジャズ」とその基礎である
「モダンジャズ」の習得と演奏&教育にはまり込んだ次第です。

結局,十五年程前に海外漂流生活を引き上げ,
相変わらずの日々を大阪や東京で続けて現在に至る訳ですが,
大事な点は何といっても「ラウンジ・ジャズ」なり「モダンジャズ」なりの
習得度でしょう。

前述の如く,僕はかれこれ十五年以上,稲森康利先生の教本や理論書,
編曲集等で独学を続け,ある時点迄,レパートリーの殆どが稲森編曲に拠る,
という状況でした。

別段,僕が稲森教程を完全習得した訳では全くありませんが,
段々と違う事もやりたくなった,というか,やる必要から
リー・エバンスという米国の教育家の教程や,
これは現在のKimball Piano Salonや「チャールストン倶楽部」音楽教室の
「エレガンス・スゥィング」スタイルの基本教材となる米国のピアノブランド,
スタインウェイによる「グレート・スタンダード」他の教材に範を求めていきます。

自分なりに「モダンジャズ」基調の「ラウンジ・ジャズ」の技術や理論の
基礎と,その教育方法が確立できたかな,と確信できるうになったのが,
この数年前。それでKimball Piano Salonという「一般向け」の音楽教室を開いた訳です。

「一般向け」というのは,それまでの僕自身の教室は,
僕の音楽事務所や契約する音楽企業の「人材育成」が主目的で,
たまたまご縁があって来られる分には大歓迎ですが,
基本的には一般からの生徒募集には極めて消極的でしたが,
初めて「初心者」の方にも満足して頂けるピアノとボーカルの教室として
開放した訳ですね。

そんな中,ある若い生徒さんからファッツ・ウォーラー等の
「オールド・スタイル・ジャズ」で教えて欲しい,という要望がありました。

これはしつこい「いい訳」になりますが,日本では「ジャズ」といえば演奏するにせよ,
レッスンするにせよ,1950~60年代の「モダンジャズ」を指し,
それ以前の「スゥィング」スタイル等は顧みられませんでした。

僕自身,流石に「ジャズ史上の偉大なピアニスト」として,
1930年代に最初の全盛期を築いたアート・テイタムやテディ・ウィルソンあたりは
レコードやCDで聴いて知っていましたが,僕自身の習得対象とは想ってみませんでした。

しつこくいい訳すれば,日本では「ジャズの習得」とは「モダンジャズの習得」であり,
それ以前の「スゥィング」スタイルの事は知らなくても困るという事がありません。

実際,稲森康利先生や塩沢修三先生といった僕にとっての「ジャズ研究(=教育)の神様」
みたいな思えた教程にせよ,「モダンジャズ」以後に限られ,稲森先生の「コンテンポラリー・
ポピュラー・ピアノ奏法」に僅かに「スゥィング・ベース奏法」として登場するのみ。

故にファッツ・ウォーラーやらラグタイムなぞ教えてくれ,と言われても
そもそも僕自身に知識がなく教えうがないし,変な言い方ですが,
「モダンジャズ」さえ勉強すれば人生間違いがない,とさえ考えてた訳です。

そもそも「モダンジャズ」と称しても様々あり,
古くはバド・パウエルやナット・キングコール,オスカー・ピーターソン,
中間がビル・エバンス,新し目がハービー・ハンコックやチック・コリア,マッコイ・タイナー,
前衛がセシル・テイラーやキース・ジャレット,今時がブラッド・メルドー他とあり,
王道ともいえるビル・エバンスのスタイルの勉強だけでも一生かかる訳。

とてもではないが「スゥィング」になぞ手を染めれない,というのが当時の返事でした。

とはいうものの,よくよく考えてみれば,僕自身のスタイルである
「ラウンジ・ジャズ」は前述の如くナット・キング・コールやオスカー・ピーターソン等の
「モダンジャズ」としては古い,というか,「スゥィング」との混血スタイルを
基調とする訳で無意識の内に「スゥィング・ジャズ」に関わっているな,と。

いわゆる「ジャズの歴史」本的な見方をすれば,
1940年代にサックスのチャーリー・パーカー,トランペットのディズー・ガレスビー等に
依って創生されたのが「モダンジャズ」という事になります。

「モダンジャズ」も色々とありますが初期のは「ビ・バップ」と呼ばれるスタイルで,
これのピアノはバド・パウエルというピアニストがスタイルを造った,という事になります。

参考動画;パウエルの演奏 http://youtu.be/TaSDinL6pC8

別な機会に詳しくお話しますが,パウエルというか「ビ・パップ」のスタイルは,
確かにそれ以前の「スゥィング」とは比較にならない「革新性」を持ちますが,
その実,欠落させてしまった部分も少なくありません。

それ故,一応「モダンジャズ」は習得できてた僕ですが,
「スゥィング・ジャズ」となると全く手も足も出ない,という事態に陥りました。

改めて気付いたのは1940年代当時は,それ以前の「スゥィング」と
新しい「ビ・バップ(モダンジャズ)」が混在しており,
僕が自分のスタイルとした「ラウンジ・ジャズ」の元になる
ナット・キング・コールやエロール・ガーナー等は,
その後も「スゥィング」のフォーマットのまま,
「ビ・バップ」のハーモニーやフレーズを取り入れたヒトであるという事。


参考音源;ナット・キング・コール・トリオhttp://youtu.be/nIOu94sRnJ0
       エロール・ガーナー     http://youtu.be/sRA-WV01Ogk

オスカー・ピーターソンも1960年代にはドラムスの入った「モダンジャズ」トリオに移行するが,
それ以前はナット・キング同様ベースとギターという「スゥィング」スタイルだった事。

1960年代のオスカー http://youtu.be/dANYs6H9Ad8
1950年代のオスカー http://youtu.be/MVpPU-afj54

オマケ;オスカーによる「ラウンジ・ジャズ」もの http://youtu.be/LT1i3561Lsc


これは「ジャズの歴史」の本的な見方ですが,
ナット・キングやオスカー・ピーターソン等は「モダンジャズ」と「スゥィング」の中間である事から,
日本では「中間派」と呼ばれるジャズ・スタイルになります。

この中間というのがビミョウな所ですが「モダンジャズについていけなかった」中途半端な
人達という意味ではなく,「スゥィング」のフォーマート,つまり「ダンスができる」
とか「一緒に歌える」「食事のBGMとしても聴ける」という「実用性」を保ちつつ,
「モダンジャズ」の新しいハーモニーやフレーズは取り入れてしまう方向ですね。

敢えていえば僕自身は「ビ・バップ」よりも「スゥィング」や「ラウンジ・ジャズ」の
方が聴いて楽しめますが,「ジャズ・マニア」は別にして一般の方々も同じではないでしょうか?

そんな訳で「ラウンジ・ジャズ」を自分のスタイルとした事は間違っているとは思いませんが,
三年程前ですが,生徒さんからの指摘で気付いたのは,「ラウンジ・ジャズ」とはいわゆる
「中間派」ジャズを基調にしている訳で「モダンジャズ」だけが基礎にならないと。

「スゥィング」や更に古い「ラグタイム」等のスタイルも習得せねば,
いわばクラシックピアニストを目指す者がショパンやドビッシーは弾けるがベートーヴェンやバッハは
弾いた事がない,というアンバランスな状態にあるのと同様な訳でこれはアカンと。

そんな訳で遅まきながら「スゥィング」以前の「オールドスタイル」の勉強を始めた訳ですが,
これは書店にいって適当な教則本を買って課題をやれば済む,という話しにはならなかったのは,
そもそも「オールド・スタイル」の教則本なんて殆どないし,少なくとも日本ではその「教育」なんて
誰もやっておらず,かって稲森康利先生の教程から学ばせて頂いたような訳には全然いかないんです。

基本的に僕は「自分が関心がある事=勉強している事」をヒトに教えて音楽教室を
営む訳ですが,「オールドスタイル」の習得は「勉強」対象の課題や方法を見つける事から
始めねばならないと分かった次第です。

以来,三年程勉強し,大体の事が見え始め,且,輸入版での教本の類も
揃い,現場の生徒さんにて「人体実験(?!)」ょこの一年程続け,
どうやら「オールドスタイル」の効果が出せるレッスンプログラムも構築できたかな,
と思えるようになりました。

それ故,めでたく「チャールストン倶楽部」音楽教室の開講となった次第ですが,
まだホームページは完成していません。

では「スゥィング」スタイルのジャズピアノと「モダンジャズ」はどう違い,
何を勉強すべきか?その辺りを次回お話しましう。 

テイタムソロブック2.jpg


                                        
(次回に続く) 

大阪市北区豊崎3-10-2 I&F梅田ビル705 Kimball Piano Salon チャールストン倶楽部
音楽教室秋期生募集(ピアノ/ボーカル) ℡ 0705-438-5371 藤井一成

未完成ですが「チャールストン倶楽部」のサイト
http://charleston.cafe.coocan.jp/charusuton_ju_le_bu/Home.html

本体であるKimball Piano Salonのサイト http://www.eonet.ne.jp/~pianosalon(2021年2月からの新URL)
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