スムース・ジャズの方法 [音楽スタイル]
*「スムーム・ジャズ」の定義1;DJ等によるループの使用
何度も繰り返しますが、ここでいう「定義」は、あくまで僕が勝手に定めたもので一般的なものでありませんが、カフェ現場としては間違いではなく、
皆さんが「カフェでラウンジミュージックを演奏したい」と希望された場合のご参考になると思います。
さて定義ですが、前章の「使い道」から考えるに、カフェの狭い演奏スペースでのライブ、という事が条件となります。
皆が盛上がって下さる(かどうか分りませんが)ライブハウスはともかく、
別に音楽を聴きたい訳ではないお客さんも少なからず混じるカフェでは、
聴きたい人にはちゃんと聴かせれ、聴きたくない人にはBGMとして雰囲気作りに役立つという立ち位置が求められます。
かと言って「遠慮したような演奏」は陰気くさいし、しっかりと弾き、且、ウルサくならない、というのは、編曲や演奏にクオリティーが求められます。
この場合、演奏のみならず、音響設備にもそれなりの工夫が必要で、
マイクを使わない生のままだと、近くの人には大音量で、遠くの人には小音量で届き、むしろマイクを使い、部屋の四方においたスピーカーからも再生させて方が、
カフェ中に平均して音を届かせる事ができ便利です。大体のカフェは、店内に平均的に音を届かせる音響設備がある筈で、それを利用しない手はありません。
ところで、米国に限らず日本でも、音楽にこだわるカフェの場合「有線放送を流すだけ」は少なく、セレクトしたCDを流す場合が殆どですが、これも、
市販CD一枚を丸々再生する、という場合と、DJがいて、客席の状況に合わせ、
次々と選曲した鳴らす、という場合があります。或は、丸々一枚のCDを流すにしろ、CDの選択に工夫があります。
更に、凝ったDJ(というか普通のDJ)ともなれば、自分が作った「ループ(ドラム等のリズム音)」を鳴らしつつ、上部では既存のCDを組合わせて鳴らし、オリジナルの音楽にしてしまう、という仕事を行ないます。こういうのを「DJミッスク」と呼ぶのですが、いっそ、上部を既存CDではなく、生演奏で行なおう、というのが「スムース・ジャズ」だ、というのが大雑把な考え方です。
ちなみに、最低二人以上のリズム隊が必要だったのが、一人のDJで済む訳だから、
安上がりだし、場所も要らないから、という考え方を進めていけば、
DJがする事を演奏者本人がしてしまうが、尚更、安上がりだ、という発想が生まれます。基本的に、僕のその口でして、自分で「ルーブ(リズムパート)」をプログラセミングし、それに合わせてピアノを弾く、というスタイルを取っています。
*定義2.ピアノやサックス等の「生楽器」のソリストがいる。
先ほど「DJを省いて、演奏者が自分でループをプログラムする」と安上がりだ、と述べましたが、逆にDJ主体で進めていくと、演奏者が要らなくなる訳です。
つまり、安上がりではないが、敢えて「共演」するべく音楽的必然があってこそ、「DJ+生演奏者」という理想的な組み合せが成立します。
要するに、DJから観て「共演してもいい〜共演したい」と思われる位の演奏者でないと駄目ですが、問題は「スムース・ジャズ」における演奏者は何を、どう弾けば良いのか?という部分です。
*定義3.,60年代の「ニュージャズ」と呼ばれる「モード奏法」をブレイクビーツに
乗せて演奏する。
僕は、ブライベートにはクラシック音楽の勉強を続けていますが(音大出身だし)、
職業としては一貫してジャズ系ピアノ奏者でありました。80年代から90年代の半ば頃迄はNew-Age(今でいうヒーリング)ミュージックに関わりましたが、基本的にはジャズ系演奏者でしょう。
元々、ロック系はあまり関心がないし、昔のR&Bも興味がないのですが、
宇多田ヒカルなんかがヒットする前頃からの、ソウル・ミュージックといいますか、ホイットニー・ヒューストンとかマライヤ・キャリーみたいなのは大好きで、
毎日聴いてました。確か、何かのキッカケでそういう音楽の仕事を頼まれて、
ニワカに取組み始めたような記憶がありますが、何をどうやればいいのか?さっぱり分らなかった事は確かです。
そもそもファンクとかソウルとかのR&B系のリズムの事は理解していませんでしたが、当時好きだったアニタ・ベーカーとかキャリン・ホワイトのCDで登場するピアノの伴奏やアドリブソロの構造が読み取れなかったのです。
それでコピーしたり、分析したり、している内に分った事は、そもそもビートがジャズ8thでもポップスの16ビートでもない、16ヒート基調の三連だという事でした。
分っただけでは仕方ないので、ピアノ練習として、リズムマシーンでR&Bのドラムパターンを鳴らし、指の練習も兼ねて、ジャズのスケールやアドリブパターン、或は、バッハの平均律ピアノ曲集なぞを毎日全曲弾は、何はともあり、リズムにアジャストして弾けるように取組みました。
もう一つ分らなかったのが、コード進行で、一応、ジャズ的なコード進行は習得していたものの、R&Bの場合、下手すると、C7のベースパターンが延々四小節繰返される、という言葉普通にあります。
いわゆる「ワンコード」の音楽となる訳ですが、この「ワンコード」がくせ者。
「コードチェンジをなくして、例えばG7だけで延々と好きなようにアドリブすればいい、というのは、実は嘘でして、乱暴に言えば「左手はC7だけど、右手はC♯m7〜F♯7を乗せていく」という「重層(ポリ)コード」の発想が必要。
これは専門的には「モード奏法」という60年代以後の「ニュージャズ」の音楽技法なのですが、「Dドリアン一発(=ワンコード)でメロディーやアドリブを組み立てる」というのは建前で、実際には重層コードや複合モード(モードを変換する)を使います。
実は色々な人が私のスタジオ(AI Music Salon 梅田)が来られて、
「スムース・ジャズ」や「アシッド・ジャズ」のデモCDを聴かせて下さるのですが、文字通り「ワンコード」で演奏されてるいケースが殆どです。
別に理論が分らないと音楽ができない、という事はありませんが、
かと言って感性だけでできる程の音感を持つ人というのも非常に少ない訳で、
「ワンコード」では、やはり立体的な音楽にはならないようです。
或マッコイ・タイナーみたない「4度構成のコード」も、最初は新鮮なのですが、
下手に使うと直ぐに平板になってしまう訳で、ハービー・ハンコックやキース・ジャレットみたいに色々な転調や対位法を駆使して立体的な音楽を構築する必要があります。
という訳で「スムース・ジャズ」に取組むにあたり、僕の場合は、「モード奏法」についての勉強を始めた次第でした。
*定義4;ブルースである事
上記「モード奏法」というのは、カソリックの教会音楽が基盤となっており、
フォーレみたいなメロディーができる訳ですが、それ故、ドビッシー風ならまだしも、日本人がやると童謡風に陥ります(それも良いと言えなくもないのですが)。
但し「スムース・ジャズ」自体はブルージーなR&Bから派生している訳で、ブルース感覚は大切です。
それと「ワンコード」というか、パソコンやシンセサイザーの「ループ」を組む場合、基本的にコートはドミナント7thになっており、それが大雑把に4度や2度上下する、という形になります。考えてみれば、これは「ブルース」というか正にR&Bな訳で、ならば、音感(使用スケール)も「ブルース音階」を用いるべきでしょう。
ちなみに「ブルース音階」も「マイナー・ペンタトニック」の変形とも考えられるし、或は「バップ・スケール(もしくは「バリー・ハリスの8音スケール)」に振り替えてしまう事も可能です。
おっと、理論的に話しに傾きました。音楽理論の事は別な機会に話しましょう。
僕は「スムース・ジャズ(やアシッド・ジャズ)をやりたいから方法を教えてくれ」という人には、「バリー・ハリス・メソード(三上クニさん著「ニューヨークスタイル/ジャズピアノ教本」を徹底的にやれ、とお奨めしてます。
教会音楽を元にする「モード奏法」も良いのですが、むしろバリー・ハリス的なバップの方法に熟達する方が、「スムース・ジャズ」に不可欠なブルース感覚が表出しやすいと思います。
何度も繰り返しますが、ここでいう「定義」は、あくまで僕が勝手に定めたもので一般的なものでありませんが、カフェ現場としては間違いではなく、
皆さんが「カフェでラウンジミュージックを演奏したい」と希望された場合のご参考になると思います。
さて定義ですが、前章の「使い道」から考えるに、カフェの狭い演奏スペースでのライブ、という事が条件となります。
皆が盛上がって下さる(かどうか分りませんが)ライブハウスはともかく、
別に音楽を聴きたい訳ではないお客さんも少なからず混じるカフェでは、
聴きたい人にはちゃんと聴かせれ、聴きたくない人にはBGMとして雰囲気作りに役立つという立ち位置が求められます。
かと言って「遠慮したような演奏」は陰気くさいし、しっかりと弾き、且、ウルサくならない、というのは、編曲や演奏にクオリティーが求められます。
この場合、演奏のみならず、音響設備にもそれなりの工夫が必要で、
マイクを使わない生のままだと、近くの人には大音量で、遠くの人には小音量で届き、むしろマイクを使い、部屋の四方においたスピーカーからも再生させて方が、
カフェ中に平均して音を届かせる事ができ便利です。大体のカフェは、店内に平均的に音を届かせる音響設備がある筈で、それを利用しない手はありません。
ところで、米国に限らず日本でも、音楽にこだわるカフェの場合「有線放送を流すだけ」は少なく、セレクトしたCDを流す場合が殆どですが、これも、
市販CD一枚を丸々再生する、という場合と、DJがいて、客席の状況に合わせ、
次々と選曲した鳴らす、という場合があります。或は、丸々一枚のCDを流すにしろ、CDの選択に工夫があります。
更に、凝ったDJ(というか普通のDJ)ともなれば、自分が作った「ループ(ドラム等のリズム音)」を鳴らしつつ、上部では既存のCDを組合わせて鳴らし、オリジナルの音楽にしてしまう、という仕事を行ないます。こういうのを「DJミッスク」と呼ぶのですが、いっそ、上部を既存CDではなく、生演奏で行なおう、というのが「スムース・ジャズ」だ、というのが大雑把な考え方です。
ちなみに、最低二人以上のリズム隊が必要だったのが、一人のDJで済む訳だから、
安上がりだし、場所も要らないから、という考え方を進めていけば、
DJがする事を演奏者本人がしてしまうが、尚更、安上がりだ、という発想が生まれます。基本的に、僕のその口でして、自分で「ルーブ(リズムパート)」をプログラセミングし、それに合わせてピアノを弾く、というスタイルを取っています。
*定義2.ピアノやサックス等の「生楽器」のソリストがいる。
先ほど「DJを省いて、演奏者が自分でループをプログラムする」と安上がりだ、と述べましたが、逆にDJ主体で進めていくと、演奏者が要らなくなる訳です。
つまり、安上がりではないが、敢えて「共演」するべく音楽的必然があってこそ、「DJ+生演奏者」という理想的な組み合せが成立します。
要するに、DJから観て「共演してもいい〜共演したい」と思われる位の演奏者でないと駄目ですが、問題は「スムース・ジャズ」における演奏者は何を、どう弾けば良いのか?という部分です。
*定義3.,60年代の「ニュージャズ」と呼ばれる「モード奏法」をブレイクビーツに
乗せて演奏する。
僕は、ブライベートにはクラシック音楽の勉強を続けていますが(音大出身だし)、
職業としては一貫してジャズ系ピアノ奏者でありました。80年代から90年代の半ば頃迄はNew-Age(今でいうヒーリング)ミュージックに関わりましたが、基本的にはジャズ系演奏者でしょう。
元々、ロック系はあまり関心がないし、昔のR&Bも興味がないのですが、
宇多田ヒカルなんかがヒットする前頃からの、ソウル・ミュージックといいますか、ホイットニー・ヒューストンとかマライヤ・キャリーみたいなのは大好きで、
毎日聴いてました。確か、何かのキッカケでそういう音楽の仕事を頼まれて、
ニワカに取組み始めたような記憶がありますが、何をどうやればいいのか?さっぱり分らなかった事は確かです。
そもそもファンクとかソウルとかのR&B系のリズムの事は理解していませんでしたが、当時好きだったアニタ・ベーカーとかキャリン・ホワイトのCDで登場するピアノの伴奏やアドリブソロの構造が読み取れなかったのです。
それでコピーしたり、分析したり、している内に分った事は、そもそもビートがジャズ8thでもポップスの16ビートでもない、16ヒート基調の三連だという事でした。
分っただけでは仕方ないので、ピアノ練習として、リズムマシーンでR&Bのドラムパターンを鳴らし、指の練習も兼ねて、ジャズのスケールやアドリブパターン、或は、バッハの平均律ピアノ曲集なぞを毎日全曲弾は、何はともあり、リズムにアジャストして弾けるように取組みました。
もう一つ分らなかったのが、コード進行で、一応、ジャズ的なコード進行は習得していたものの、R&Bの場合、下手すると、C7のベースパターンが延々四小節繰返される、という言葉普通にあります。
いわゆる「ワンコード」の音楽となる訳ですが、この「ワンコード」がくせ者。
「コードチェンジをなくして、例えばG7だけで延々と好きなようにアドリブすればいい、というのは、実は嘘でして、乱暴に言えば「左手はC7だけど、右手はC♯m7〜F♯7を乗せていく」という「重層(ポリ)コード」の発想が必要。
これは専門的には「モード奏法」という60年代以後の「ニュージャズ」の音楽技法なのですが、「Dドリアン一発(=ワンコード)でメロディーやアドリブを組み立てる」というのは建前で、実際には重層コードや複合モード(モードを変換する)を使います。
実は色々な人が私のスタジオ(AI Music Salon 梅田)が来られて、
「スムース・ジャズ」や「アシッド・ジャズ」のデモCDを聴かせて下さるのですが、文字通り「ワンコード」で演奏されてるいケースが殆どです。
別に理論が分らないと音楽ができない、という事はありませんが、
かと言って感性だけでできる程の音感を持つ人というのも非常に少ない訳で、
「ワンコード」では、やはり立体的な音楽にはならないようです。
或マッコイ・タイナーみたない「4度構成のコード」も、最初は新鮮なのですが、
下手に使うと直ぐに平板になってしまう訳で、ハービー・ハンコックやキース・ジャレットみたいに色々な転調や対位法を駆使して立体的な音楽を構築する必要があります。
という訳で「スムース・ジャズ」に取組むにあたり、僕の場合は、「モード奏法」についての勉強を始めた次第でした。
*定義4;ブルースである事
上記「モード奏法」というのは、カソリックの教会音楽が基盤となっており、
フォーレみたいなメロディーができる訳ですが、それ故、ドビッシー風ならまだしも、日本人がやると童謡風に陥ります(それも良いと言えなくもないのですが)。
但し「スムース・ジャズ」自体はブルージーなR&Bから派生している訳で、ブルース感覚は大切です。
それと「ワンコード」というか、パソコンやシンセサイザーの「ループ」を組む場合、基本的にコートはドミナント7thになっており、それが大雑把に4度や2度上下する、という形になります。考えてみれば、これは「ブルース」というか正にR&Bな訳で、ならば、音感(使用スケール)も「ブルース音階」を用いるべきでしょう。
ちなみに「ブルース音階」も「マイナー・ペンタトニック」の変形とも考えられるし、或は「バップ・スケール(もしくは「バリー・ハリスの8音スケール)」に振り替えてしまう事も可能です。
おっと、理論的に話しに傾きました。音楽理論の事は別な機会に話しましょう。
僕は「スムース・ジャズ(やアシッド・ジャズ)をやりたいから方法を教えてくれ」という人には、「バリー・ハリス・メソード(三上クニさん著「ニューヨークスタイル/ジャズピアノ教本」を徹底的にやれ、とお奨めしてます。
教会音楽を元にする「モード奏法」も良いのですが、むしろバリー・ハリス的なバップの方法に熟達する方が、「スムース・ジャズ」に不可欠なブルース感覚が表出しやすいと思います。
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