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アメリカン・ピアノについて(その3)BCクラス [ピアノ]

スタインウェイが素晴らしいのは当り前でしょうし、ハンブルクだろうがニューヨークだろうがスタインウェイである限り、「いいピアノですねぇ」と感じてしまいます。実際、良いのですが、それとは別に「有名なブランドだから良いに決まっている」という先入観から「いい」と感じてしまう場合もある訳です。

こう言ってはなんですが、日本にあるスタインウェイは良きも悪しきも「日本人向け」に整調してある場合が多々あり、本来の姿というか欧米人向けのをそのまま持って来ると、一般の日本人には弾き難い、と感じられる筈です。
早い話、ヤマハだって「日本人向け」と「欧米人向け」とでは別物みたいに違ったタッチや音色に整調されている訳ですから。

そう言えば、今はなき新大阪の旧日本ベーゼンドルファーのショールームには、同じ機種が数台ある場合、それぞれが別物みたいに違っており、理由を尋ねると、(さすがに「日本人向け/外人向け」とは言われませんでしたが)弾く人の趣向を想定して、異なるセンスのものを用意する点はさすが、だと思いました。
尤も、ショールームを閉鎖される一年位前から、なんだか国産的な整調が大部分を占めておりガッカリしましたが、その後、ベーゼンドルファー技術者によるBTECが設立され、本来の「ウィーン」式で統一されておられるようで一安心です。

別な所でも述べましたが、アメリカ人とドイツ人とでは音楽の感覚が異なり、隣接するドイツとウィーン(オーストリア)とでもかなり感覚は異なります。しかし、それらは英語とドイツ語のように同根ですが、日本人の音楽感覚というのは、もの凄く特殊で、同じようにはいきません。

基本的に、リズムの裏表が逆転しており、例えば「ニューイヤーコンサート」のアンコール曲;ラデッキー行進曲でウィーン・フィルが演奏すると、日本人と手拍子の「ノリ」が合いません。ところが関西のオーケストラの演奏だと、日本人観客とぴったりと「ノリ」が合います。

年末の第九にしても、第四楽章は「一拍三連」リズムが基調なのですが、
これは普通の日本人にはできす、ベートーヴェンの筈が、なんだか「お猿の籠屋(えーさ、えーさ、えさほいさっさつ)」のノリで大合唱してる場合が殆どです。
或は若者がダンスをする姿を見ていても、本来のノリとは違う訳で、クラシックだろうがジャズ.ロックだろうが、日本人だと「盆踊り」になってしまいます。

勿論、一流のプロは違う訳で、僕が経験した範囲で言えば、以前、クラシックピアニストの清水和音さんの演奏会に行きますと、ラフマニノフの協奏曲三番を共演するオーケストラが「欧米のクラシックのノリ」ではなく「日本的な盆踊りのノリ」で「クラシック」の清水和音さんとは全然合ってない訳です。
それで清水さんも弾き難そうというか、「ノリ」が狂ってしまいご自身でビートを取りなかしているシーンもありました。
同じシーンを、関西出身のギタリストの(確か)藤井○○さんの演奏会でも目撃しました。或は、僕の母校の定期演奏会で、何かの記念として、客演指揮に岩城裕之さんが出演されたのを観に行きましたが、指揮棒とオケの「ノリ」が全く合ってなくて、唯一、ティンパニーの先生のみが岩城さんと合っている、という有様でした。

これらの演奏会では、オケの方は、そもそも「合ってない」という意識がないらしく、平気で演奏を続けられていたし、終演後、お決まりのソロイストもしくは客演指揮の岩城さんとコンサートマスターとの握手があったりする訳ですが、正直言って、どう仕様もなくデタラメな演奏な訳で、ソリストの方も仕事とは言え、笑顔で握手したりするのは気の毒だなぁ、と思いました。
更に、母校の学生オケは致し方ないとして、清水さんと「共演」したオケがあまりにもヒドいので、僕はてっきりアマチュアかと思ってたから、関西を代表するプロオケだというので二度ビックリしました。

結局、清水和音さんや岩城裕之さん等は「本来のクラシック」であり、盆踊り調のラフマニノフやロドリーゴを演奏する方々は「和製クラシック」であり、これは全く異なるジャンルだと考えるべきでしょう。僕は、日本のクラシックやジャズの事は詳しくなくて、誰が有名だとか人気がある、とかも全然知らないのですが、ラジオやテレビで見る限り、日本人にも幾らでも「本来のクラシック(やジャズ)」の人はいますし、卑近な霊ですがAmerican Piano Socityのレンタル練習室をご利用される、多分無名な方にも「本来の〜」はおられます。

僕自身の哲学として、日本人である以上、「日本のクラシック(やジャズ)」に昇華されてこそ本物でしょうが、これは英語で例えれば「外人には通じない発音や文法=和製英語」ではなく、発音も文法もちゃんとしており、しかし、欧米人ならばやらないが、欧米人にも美しく感じる英語、というものでしょう。

実際には、まずは「本来の欧米の感覚」を身に付ける必要があり、その為の強力な武器としてお薦めしたいのが、実は今日の話題である「BCクラス/アメリカンピアノ」なのです。

ふーっ、やっとテーマに戻りました。アメリカンBCクラスというのは、スタインウェイみたいに「現役Aクラス」でも、メーソン&ハムリンみたいな「昔はAクラス」でもなく、昔も今もBかCクラスのお手頃価格のピアノです。

世界的に見て、ヤマノやカワイのように安いアップライトからフルコンサート迄のフルラインナップで揃うのは稀で、アップライトしかなかったり、アップライトと小型グランドのみ、或はフルコンは得意だが小型は今イチ、とそれぞれ役割分担しています。

さてBCクラスですが、勿論、品質的にもAクラスに落ちる、という違いもありますが、むしろ「家庭用ピアノ」として発達してきた、というコンセプトに特徴があげられます。代表的ブランドがボルドウィンで、かって米国の学校では「講堂にはスタインウェイのグランドが、教室にはボルドウィンのアップライトがある」のが定番だったそうですが、日本でも一時期は沢山のアップライトが輸入されていました。このボルドウィンのアップライトは、国産からすると「雑いなぁ」とか「ジャズは良さそうだが、クラシックには向かない」と感じたりしますが、実際には、バッハやショパン等のクラシックも、国産よりも数段上の音楽性で鳴らします。

僕の同級生で、ピアノ技術者を目指していた友人と若い頃交わした会話として、「ボルドウィンで弾くと、音がポツポツと切れてしまうから駄目だ」というのが記憶にあります。彼に言わせるとアメリカンピアノのタッチが悪いからだ、となります。当時の僕は、漸くアメリカンピアノで弾くバッハやショパンの良さに感心した、という程度しか理解がありませんでしたから、彼と似たような印象を持ちました。

ちなみに「音の良さ」というのは、当時、よく弾いたヤマハのG3やディアパソンの183Eというグランドピアノと比較にならない程に良質な響板がアメリカンのアップライトに使われいた事が理由です。今となってG3や183Eは「国産としては良質な時代」という事になるのですが、それでもアメリカンピアノと比べますと「プラスチックと木」位に音の響きや深さに違いを感じられたものです。

問題は「タッチ」ですが、これが国産とは全く異なる訳です。
というのは、今にして思えば、前述の如く、日本人の弾き方というのは、世界的にみれば異端であり、本来のクラシックやジャズの弾き方とは表裏逆転した「奏法」を持ちます。つまり「叩く」か「そっと触る」かしかなく、且つ「鍵盤を弾く」事には注意を払っても「鍵盤を上げる」事には注意を払いません。
僕は、よく「オジギ文化」と呼ぶのですが、「丁寧におじぎ」する人はいても、下げた頭を上げる事に対して注意を払う人はいません。この点、欧米人は下げるのも上げるのも同じ力をかけるし、ピアノの弾き方も「弾く」だけでなく「上げる」につしても重視します。

それが故に、欧米のピアノは「鍵盤をどう上げるか?」についてコントロールができないと、総体として雑な演奏になってしまいます。特にアメリカンブランドのBCクラスのアップライトは、強力な「突き上げ」があり、「日本人特有の雑な上げ方」で演奏すると、「雑な演奏」になり、「アメリカ人のように繊細に上げ方をコントロールしない」とちゃんとした演奏になりません。

恐らくスタンウェイも本来は「日本的な弾き方」には合致しないタッチの筈ですが、日本で流通させるにあたり、日本人技術者が「日本的」に変形というか整調してるようです。もしくは、スタインウェイのようなAクラスは懐が広い、というか、本来的な弾き方だけでなく、日本的な弾き方でも、それなりに弾けるようにできているのかも知れません。
ところが、BCクラスは「アメリカ人でないと無理」という事は全くないのですが、
「日本的な鍵盤の上げ方を意識せず、雑に上げてしまう弾き方」では、その「雑さ」が表出します。アメリカンピアノと比べると、国産の大半のピアノが、元々そうなのか、或は整調のせいか、タッチについては、「鍵盤を弾く」方はまぁ良いとして、「鍵盤の上げ方」は曖昧だし返りが遅く、「誰が弾いても同じ音」しか出なくなります。対してBCクラスといってもアメリカンピアノの場合、「雑に弾く」と雑な演奏になるし、ちゃんと弾くとちゃんとした演奏になります。

スタインウェイ等のAクラスのピアノに限って、「業務用」的に黒色のシンブルなボディのものが多いのですが、BCクラスの方が、特にアップライトは、豪華な家具調ボディを持つ事が少なくありません。
これは、欧米の家庭用ピアノは、基本的に家具や家のインテリアとコーディネイトしてデザインされているからですが、だから取って「インテリアピアノ(形は綺麗だが中身は悪い)」として取扱うのは間違いです。
中身で考えて、国産にはない「深い音色」「豊かな音楽性」や「明確なタッチ」を持つ、要は「弾く程に上手になるピアノ」である、と言えます。

さて具体的なブランドですが、元来、色々なメーカーがありましたが、
80年半ば頃から、米国生産でなく韓国やインドネシア、最近は中国に生産拠点を移しつつあり、「昔はAクラス」で今時はBクラスに落ちてた、私も興味があったメーソン&ハムリンも数年前から中国生産となりました。

中国物は嫌い、という事は全くないのですが、ピアノ製造に関しては、まだレベルに達しておらず、敢えて手を出さない方が無難と言えます。米国生産の、BCクラスも、確かに製造はいい加減な事が多々ありますが、基本的に部分はしっかりしているし、中国生産と違い、整調していくと、ちゃんとしたものに変わっていきます。

但し、スタインウェイ等のAクラスは別として、アメリカンのBCクラスは、今イチ、完璧に機会が整調されるという感じはなく、かといって、いい加減な調整でも、もの凄くは悪くならない、という性格もあります。むしろ、日本に輸入された後、下手に整調しなおされたものは、バランスが破綻してしまい、どうにもならない代物に陥っているケースがあります(尤も、それらは再調整で、ちゃんとしたものに戻ります)。

それを踏まえた上で、敢えてBCブランドを選べば、かって協立楽器によって輸入された「米国製の(中国製のは輸入されていない)」ボルドウィンとキンボールが良いかと想います。特にボルドウィンはベターです。

その他にウーリッッァーも時代によれば良いのですが、これは韓国生産になってからのものも入ってきてますから、要注意です。実は韓国生産されたものろを何度か弾いた事がありますが、音色やタッチはなかなか良いと思いましたが、機械的な部分はよく分りません。
何かの折に述べたいと思いますが、あるドイツの有名ブランドも韓国生産になっており、元の設計がよいせいか音やタッチはなかなか良いのですが、果たして、機械的にはどうなのか?私も知りたい所です。
ちなみに、韓国ブランドであるヤンチャンやサミック他の小型グランドピアノを弾いた事がありますが、正直な所、音色といいタッチといい、予想外の良さで、自分でも欲しいと思った程ですが、こちらも耐久性等については知りませんので、もしお使いの方がおられればご教示下さい。

尚、キンボールは15年程前にピアノ業務をやめ、ボルドウィンは現在は中国生産になっています。従って、今、現実に手に入れるとなれば30年位前のボルドウィンやキンボール、(米国生産の)ウーリッツァーあたりの中古となります。
多分、アップライトで50万円以内で手に入る筈ですが、信頼のできる工房等で、弦やハンマー交換、その他のオーバーホールをされると理想的です。

恐らく、国内で出回っている中古は、あまり弾かれていない物が大部分の筈で、これを再調整もしくはオーバーホールし、弾き込んでいきますと、驚く程、豊かな音が鳴り出すでしょう。このあたり、国産のプラスチッキーな材質のピアノと違い、さすがに「木でできたピアノ」だけあって、幾らでも成長していきます。

勿論、ピアノ初心者の方にもアメリカンピアノはお奨めですが、国産グランドピアノを使われているピアノ講師の方のセカンドピアノとしてアメリカンのBCクラスのアップライトを併用される事も協力にお薦めします。
僕は、BCクラスの欧米ピアノとの付き合いが割合多い関係で、逆に国産の良さというものも理解できます。

アメリカンのBCクラスというのは、簡単にいえば「ボロいピアノ」なのでしょう。対して国産というのは「よくできたピアノの代用品」という感じでしょうか。
どうも国産は「本物のピアノ」という気がしません。電子ピアノ同様、よく似た代用品という気がします。
勿論、お金があればスタインウェイやベーゼン等の欧米のAクラスを持つ事が理想的ですが、経済的に許されないのであれば「ピアノによく似た代用品」ではなく、ボロくても「本物のピアノ」を持ち、毎日、弾かれる事によって「ピアノの弾く楽しみ」が味わえます。

僕がアメリカンピアノ・ソサエティーを通してお伝えしたい事は、必ずしも、プロとしての理想的な楽器や教程を目指す訳ではなく、むしろ家庭やカフェ等で弾いたり、習ったりすればいい、等身大の音楽生活の充実です。

比較的安価で入手できるピアノや、カフェや家庭のリビングでのパフォーマンスとして最適なクラシックやジャズのピアノ音楽を皆さんにご紹介したい、という想いが、アメリカンピアノ・ソサエティーを立ち上げた理由です。

以上、まずはアメリカン・ピアノについて述べました。

次回は「アメリカン・ピアノ・メソード」について述べます。

ホームページ:アメリカン・ピアノ・ソサエティ
http://web.mac.com/pianosalon/iWeb/American%20Piano%20Sosiety%20by%20AI%20Music%20Salon/Home.html

 
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