SSブログ

Kimball Piano Salonとは?/米国ピアノ編その1 [ピアノ]

2560585628_b4902c6770.jpg僕が主宰するModern Art Societyには色々なプロジェクトがありますが,「キンボール・ピアノ・サロン」を立ち上げたのは、一口に言えば「アメリカン・ピアノが好きだ」からです。

Kimball Piano Salon http://www016.upp.so-net.ne.jp/kimball

では「アメリカンピアノの魅力」は何か?という話しになりますが、その前に「アメリカンピアノ」とは「楽器=米国製ピアノ」という意味と「教材=米国ピアノ・メソード」という二つの意味がある事をご理解下さい。

矛盾するようですが、アメリカン一辺倒という事もなく、ウィーンやチェコのピアノが好きだったり、英国系のジャズメソードやバルトークやコルトーの校訂楽譜を愛用したり、という事もありますが、敢えて一つを選べばアメリカンかな?という思っています。

そて、メソードは次回にするとして、今回は「米国製ピアノ」の魅力について述べてみます。

日本では米国製ピアノはあまりお目にかかりません。尤もアメ車同様、米国やカナダ以外では米国製ピアノはあまり普及していません。(近年、中国でアメリカンブランドのピアノが生産されていますが、これらは、本来の意味でのアメリカンピアノとは別物と考えます。)

何故、普及していないのか?

単純な話し、輸出せずとも米国内で市場が賄えたのと、他のピアノ市場を持つ国…日本やヨーロッパ…には夫々のメーカーがあり、米国から輸入する必要もなかった、という事でしょう。
或は、パリでもベルリンでも、マクドやスタバ(両者を一緒くたにするのは乱暴ですが)等のアメリカン・ファースト・フードが進出している反面、ことピアノに関しては、ヨーロッパ人は、今イチ、アメリカン・ピアノに違和感があるのでは?と思います。

非常に狭い範囲の話しで恐縮ですが、僕の友人であるドイツ人やフランス人等は、本来ピアノというものはヨーロッパ製だが、「ピアノの代用品」としてヤマハ等の日本製ピアノを選択する、と言ってました。というか、日本製は全てが無機質な、いわばH2O的な音色だから彼等にはプラスにもマイナスにもならないものの、アメリカンピアノとなると「アメリカ色」が付いており、それが邪魔になるのかも知れません。

では我々日本人にとって「アメリカ色」は邪魔か?といえば、少なくともジャズやクラシックを演奏する限りにおいて、プラスであってもマイナスでないと断言できます。僕が初めてアメリカンピアノに触れたのは、若い頃に出入りしていたある楽器店にあるBaldwinというメーカーのアップライトからでした。
スタインウェイにはハンブルク製とニューヨーク製がありますが、こちらは知らないと違いが分らないし、日頃、国産しか触れない方にも、そう違和感がない音色やタッチの筈です。(というか国産が真似してる訳ですが。)

ところがBaldwinやKimballの、しかも完全に整調してないアップライトとなると、西部劇で出て来るようなホンキートンク風の音色と国産とは全く異なるタッチで、
当時、Diapason(国産)のグランドピアノを愛用していた僕としては、かなり違和感がありました。正直、音色といいタッチといい「雑いなぁ」という所でした。

尤もジャズを弾くと、なるほど良い雰囲気だし、スゥイングさせ易すく、「さすがにアメリカンは違うな」とは感心しました。

問題はクラシック。試しにバッハを弾くと、これが全然具合にいいんです。
少なくとも、当時、国産としては最良と思えたDiapasonよりも「クラシックにあった音楽性」を持ち合わせ、気持ち良く弾けました。ショパンも予想通り。

ドビッシーもなかなか。とはいえモーッアルトは駄目かな、と思ってましたが実際弾くと「よく歌うなぁ」という所。これも良いんですね。

今にしても思えば、国産のオガクズを接着剤で固めた作ったようなピアノと、ベニヤ板とはいえ本物の木で作られたアメリカンピアノとでは「音の深み」が違って当然ですが、当時は非常に驚きました。

それと薄々感じたのは、国産ピアノがいわば「日本なまりの(外人には聴き取れない)英語」だとすれば、アメリカンピアノは「アメリカン英語」そのものな訳で、要は「欧米」とくくれる同種の音楽世界を持合わせている訳です。

蛇足ながら、僕はアメリカンだろうがイギリスだろうが英語はあまり分りませんし、アメリカン英語に何の違和感もなく、むしろ、インドやシンガポールの英語に違和感を覚えますが、本来的なイギリス英語からすれば、インドやシンガポールの方が正統(?)であって、アメリカン英語の方が発音や使い回しが異端だそうです。

そういう意味でヨーロッパ人からすれば、アメリカン人の英語やピアノは、なんとも「アメリカン」だから相容れぬものを感じてしまうのではないか、と思いますが、では「日本人のカタカナ英語」が通じるか?といえば更に異質な訳ですね。
そういう意味で「アメリカンピアノが持つ音楽性」をテコにジャズは勿論、クラシックの音楽性を吸収しよう、というは決して間違いではありません。

アメリカンピアノを推奨するもう一つの理由が、そもそも現代のピアノの現在は、チッカリングやスタインウェィといったアメリカンピアノの構造から発展しており、これの影響がないピアノはあり得ないからです。
或は、衰退しましたがフランスのエラールの影響も大です。ドイツだけでは、現代のピアノにはなっていません。

僕が密かにお手本にしているフランスの巨匠アルフレッド・コルトーの本に、コルトーの奏法というのはフレンチピアノ(プレイエル)やアメリカンピアノでないと駄目だ、みたいな事が書いてありました。尤も、コルトーがいう「アメリカンピアノ」とは実際の米国ピアノなのか、ドイツ製のスタインウェィ(当時はアメリカ系のピアノと思われていた)の事なのか、は分りませんが。

そういう意味で、今となっては「伝統的なピアノ」とは米国製を指す場合もあり、
ヨーロッパ人から見ても、アメリカンピアノは別に異端ではないと言えます。

ところで「アメリカンピアノの魅力」ですか、「欧米の音楽性」を居ながらにしろ味わえる、という事の他に、僕は「日本の家屋に合う」という点も上げます。
ヨーロッパのピアノは、どうも「石造りの家」を前提に音が作られているのに対し、アメリカンピアノは、米国住宅の殆どが木造である関係で「木造の家に合う」響きに作られています。

僕は、一時期、台湾で暮らしていましたが、その時、台湾には色々な米国製ピアノが普通に存在する事を発見しました。多分、米軍経由で入ったかと思いますが、古いピアノは米国製でしたし、楽器店でも韓国製に混じって米国製が置かれていました。それで嬉しくなって米国製ピアノを弾かせて貰うのですが、台湾の古い家屋は石造りの響きが長い空間が多かったせいか、どうにも音がモゴモゴして困りました。逆に、チェコ製ピアノやハンブルク製のスタインウェィはとても綺麗に響きました。台湾は高温多湿ですから、ヨーロッパ製ピアノは合わないのですが、それでも空間の響き加減がヨーロッパに近いせいか、とても綺麗に響く訳です。
だから時々日本に帰国すると、全然響きがない事に愕然とするとともに、そういう空間で弾くヨーロッパ製ピアノは、醤油抜きで刺身を食べるが如くに、彩色が欠け、味気なく思えました。

ところがアメリカンピアノだと、日本の空間でも結構よく響くというか、最適とは言えないにしろ、下手に石造りの空間に置くよりも、本領を発揮します。
スタインウェィもハンブルク製とニューヨーク製とで、まるで異なった鳴り方をしますが、ハンブルク製が倍音をふわりと響かせて音を作るに対し、ニューヨーク製は音の本質部分だけで鳴らすという感じです。
国産でいえばボストン(ニューヨークスタインウェィの設計)は勿論、ヤマハも、ニューヨークスタインウェィ的な鳴り方をしますが、畳や絨毯の部屋で鳴らすならば、ハンブルクより本領を発揮させ易いのでは、と思います。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。