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やっぱり「ビル・エバンス」スタイルでのジャズピアノ・レッスンはやります! [チャールストン倶楽部]

昨日,自分が教える「ジャズピアノ」コースの研究対象として「ビル・エバンス」は扱わない
と書きましたが,早速,今日,生徒さんからご指摘を受けました。

えっ,ビル・エバンスを教えない?だけど,先生,教えてるじゃん」と。

(蛇足ながら,関西人の癖して「じゃん」という言い方をするのは嫌ですけど)

僕自身はさほどビル・エバンスのコピーをした経験はありませんが,
例えばピアノ屋さんでピアノの試弾をすると,
どういう訳か「エバンス風」の和音やフレーズになってしまいます。

それと「ハーモニー(和音ではなく和声)」の根幹を,
僕自身は故塩沢修三先生の理論体系で独学(私淑)しましたが,
塩沢先生こそ偉大なる「ビル・エバンス研究家」でした。

僕が,エバンスを見本として掲げないのは,
一見「エバンス風」に弾くというのは,案外に容易だから, 本当に弾けるようにならないままに満足してしまうからです。
「ブルースピアノ」同様。

実際,市販される「ビル・エバンス奏法」中の或る種の物は,
「一見エバンス」にインスタントになれる「教育上好ましからざるもの(笑)でして,
僕は自分の生徒さんには,そういうものは絶対に使わないようにお願いしています。

というのはエバンスの音楽を「和音」と「フレーズ」とパターン化すると, 誰でも「一見エバンス」に簡単になれてしまいますが,
「本物のエバンス」は「和声」を構築できないと成りません。

「9thから始まり13thに連なる」フレーズとか「左手のコードは真ん中を密集させる」ボイシングとかをパターン化させたできた「エバンス風」というのは,本物のエバンスが最も忌避するものだと思います。

そもそもエバンスの音楽はピアノパートだけ観てても駄目で,バッハのフーガのごとく,ベースやドラムの動きとの相対関係で導かれるものであり,市販楽譜なり自己採譜にしろ,トリオ全員の音を採譜したものでないと意味がありません。

言葉だけが垂れ流されている「モード奏法」というものも,別に「ドリアン一発」でやっている訳ではなく,オスティナート(係留音)上に「偶成和音」やら「対旋律」やらがからみあってできている訳で,「左手コード&右手メロディー/アドリブ」という単純なものではありません。

正直言って,僕でも「エバンス風」ならば結構真似できますが,
本物のエバンスは,バッハがやったような「同時に三声のメロディーを進行させる=フーガ」的な即興であり,至難の技です!

又,ピアノ奏法にしても,「エバンス派」のオジさん(プロにはいない)が,よく写真でみる「ピアノに向かい両手の伸ばした中に頭を埋没させている」のを真似しており,観ている方が恥ずかしくなります。

なるほどエバンスとかキース・ジャレットは一見奇妙な弾き方をしていますが,肩から肘を通り,手首に抜ける流れは,もの凄くオーソドックスというか,手自体をオーソドックスに弾く為に,リズムが固まるのを防ぐ為に,肩を広げたり,立上がったり(?)している訳です。

あれ,実は「のってる」からやっている訳でなく,奏法上の必然性でやっている筈です。

その「原理」を学ぶのであれば,その人の体型に応じた「動線」ができる訳で,普通,日本人の骨格や筋肉の付き方で,エバンス風やキース風になる事はあり得ないし,「エバンス風おじさん」の奏法は最も「本物のエバンス」に遠いものなのです。

観た目はまるで違いますが,日本人ならば,ジャズでは木住野佳子さん,クラシックでは藤原由紀乃さん,ニューエイジの加古隆さん等の腰を中心に左右に力を流せる奏法こそが,エバンス奏法(?)に近く,音質も綺麗な訳です。
(大体の日本人は前後に動く。本来は身体は固定さ,内部的には左から右に力を流すべき)

ところでビル・エバンスの音楽構成は,ファッツ・ウォーラー等の黒人ラグタイムピアニストや白人のスウィング系ピアニストであるジョージ・シアリングに似ていると思います。

ファッツ・ウォーラーなんて,単に「ブン,チャ,ブン,チャ」という「スゥイング・ベース奏法(一拍目でルート,三拍目で5th,二,四拍は和音を弾く)」と思われていますが,実はとんでもなく複雑な事をやっているのです。

敢えていえばビル・エバンスを予見させるような,複合ハーモニーとか対旋律とかが,一体どうやつて作ったのか?と腰をヌカす程に緻密に造形されているのです。

という訳でして「エバンスをやりたいならばラグタイムやスゥィングジャズを学びたまえ」とは言いませんが,近い事はやって頂きたいなぁと。

「ビル・エバンス奏法は教えません」と書いてしまいましたが訂正します!

「ビル・エバンスをやりたいのならば,ちゃんと勉強して下さい。僕が提唱する五段譜にて,スケールや5声体和声配置を行い,対位法的なラインを設定できるようになって下さい」

そうなれば「ビル・エバンス奏法」が学べます。

「なんちゃってエバンス」では駄目なんです。

「ワルツ・フォー・デビュー」の市販コピー楽譜(間違い多し!)を持って来て弾くのもやめましょう!

やるならば楽譜はそれで良いとして,ベースラインを歌いながら,或は,ピアノとベースのリズムをドラムが受け継いで鳴らすのも擬音で歌いつつ,ピアノを弾けるように目指して下さい!
何はともあれ「5-way close&open voicing」ができる事が大前提なので,「五線紙と鉛筆/消しゴム」は沢山用意して下さいね!

ビル・エバンス。やりましょ! 但し「似て非なるもの」でなく,むしろ「似てなくて近いもの」を目指しましょう!
The Harmony of Bill Evans

The Harmony of Bill Evans

  • 作者: Jack Reilly
  • 出版社/メーカー: Hal Leonard Corp
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: ペーパーバック



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